
戦後約80年もの間、清酒製造免許の新規発行が事実上認められてこなかった日本酒業界。そんな伝統に問いかけるように、それぞれの土地で新しい酒造りに取り組む若き醸造家たちがいる。 秋田・男鹿。旧駅舎を再生した醸造所を拠点に「稲とアガベ」を立ち上げた岡住修兵は、日本酒特区の実現を目指し、業界に、そして土地に新しい風を呼び込もうと動き出す。 フランス・パリ。日本酒ベンチャー「WAKAZE」を共同創業し、世界屈指の食の都に醸造所を設立した今井翔也は、日本酒を「世界酒」へと発展させるべく、異国の地で酒を醸し、文化をつくる。 福島・南相馬。原発事故で一度人口がゼロになった小高区で民家を改装し醸造所「haccoba」を構えた佐藤太亮は、東北に伝わる伝統製法も取り入れつつジャンルの垣根を超えた自由な酒造りを行いながら、地域の未来を見据える。 日本酒離れ。縮小する市場。変わらない制度……そんな状況でも既存の免許の枠外で自由に発想し躍動する若き造り手たち。議論を交わし、刺激を与え合いながら進み続ける彼らが手を組み、掲げる「クラフトサケ」という新しい潮流は、日本酒という伝統を大きく揺さぶり始める。その只中で、造り手たちは問い続ける。「日本酒はどこへ向かうのか」「伝統をどう受け継ぎ、どう変化させるのか」。それぞれの挑戦は、やがて一本の流れになり、日本酒の未来へとつながっていく。5年半にわたり、酒文化変革の黎明期を、現場の熱とともに見つめ続けたヒューマンドキュメンタリー。