
『鯛のあら』 遺産整理中の古い家に、自称作家の男・センセイとその甥・タイボクが暮らしている。ある夜、届けられた鯛のお頭が夜中に突然奇妙な物語を語り出す。 その物語通りに若い女・ツル子がその家に現れ、三人の共同生活が始まる。そして、鯛が最後に告げる“世界の終末”とは――。 『白雨』 車で実家へ向かう途中、電話で母親と口論をしていた奈津菜(なつな)は突如、車のボンネットにカラスが落ちて急ブレーキを掛ける。 そのカラスは、なぜか「乾燥」し、死んでいた。 直後に降り出した白い雨。それは、触れた瞬間にあらゆる水分を奪い、人間や物体を急速に乾燥させる未知の恐怖だった。 車外に出ることもままならず、急激な乾燥によって電線や車が音を立てて崩壊する。雨はいつ止むのか。目の前には雨を浴びた瀕死の男。奈津菜は意を決して車外に出る。 『凍えるほど近く』 静まり返った冬の奈良井宿。人気のない道をひとりで歩く江美子と、それを追いかける夫の亮一、そして息子の和穂。やがて三人は合流するものの、夫婦の関係は悪化していく一方だった。それを見た和穂はどこかへ姿を消してしまう。 我が子を探し始める二人。しかしその最中、亮一の口にした言葉が、江美子を変えてしまい―。