砂利川権兵衛

大いなる幻影 Barren Illusionの砂利川権兵衛のレビュー・感想・評価

大いなる幻影 Barren Illusion(1999年製作の映画)
3.8
武田真治の住んでる部屋がメチャクチャお洒落。『東京上空いらっしゃいませ』の中井貴一の部屋の次くらいにお洒落で、こんな部屋に住んでみたいと思った。

コピー機のくだりがジャンルホラーでもないのにガチンコで怖がらせに来ており、変な笑い声が出ましたね。影が濃すぎて真っ黒になってる女の人は完全に『ニンゲン合格』のお父さんだし、実質『回路』の黒いシミと言い切ることができる。屋上からの落下シーンのほうは画面の都合上『回路』よりも『神田川淫乱戦争』のラストを強く想起した。

言われたことを真に受け過ぎて(?)本当に「スー…」と消える武田真治、黒沢清名物「ここではない何処か」を目指すも辿り着けないどころか飛行機に乗ることすら許されない唯野未歩子、日本の存在しない(しかもユーラシア大陸は黒く塗り潰され一体化してる)世界地図、なんの脈絡もなく海の向こうから流れて来る白骨死体など、台詞による説明はほとんどないものの、思いの外ユーザーフレンドリーに描写された閉塞感とディストピア感が楽しい。ロマンス映画としての結末は宙ぶらりんだけど、それもまたヨシ。

全体的に、映画美学校の授業の一環として撮られたことに納得できるインディ的な胡乱さが好ましい作品だった。