このレビューはネタバレを含みます
自動車メーカーを舞台にした産業スパイもので、スリリングな脚本と緊張感漂う演出が冴え渡る。悪の陳腐さについての報告だ。
叶順子が口紅で枕に"x=8"と殴り書く場面が、イカしてる。ついに恋人の身体を利用した挙句、「君を愛しているからだ!」という全くもって意味不明な言い訳をする田宮二郎に対するカウンターとしてはこれ以上ない。そのため、ラストの展開には首を捻らざるを得ない。
ライバル企業の菅井一郎は、元関東軍諜報部で誰もが物怖じする存在だが、色仕掛けにいとも簡単に引っ掛かったり、向かいのビルから会議室を覗き見、盗撮(からの読唇術)される等々、脇が甘い。田宮二郎の上司・高松英郎は彼に挑むために執念を燃やし、脅迫のために車を用いるなど、仮にも貴方は自動車メーカーの人間だろうと突っ込みたくなる。
前景に遮蔽物を配置するシネスコの使い方とか斬新。