三国連太郎と佐藤浩市がしっかりと親子共演した唯一の映画（この時、父は73歳、息子は35歳）。役柄と同様この親子には確執があったと耳にしているので、料理対決シーンには演出以上に緊張感を感じながら観た。一方その演出自体は、派手に感情を打ち出したり揺さぶりをかけようとすることはなく始終控えめなトーンで進行し、非情に繊細なバランス感覚で作られていたように思う。三国連太郎と古くから組んできた森崎東監督なので、本作の親子共演を手掛けるにあたり何か期するものがあったのではないだろうか。今年行われた佐藤浩市へのインタビューでは本作の名が挙げられ「あの映画で父と共演して本当に良かった」と語っていた。本作のラストカットで長映しされるメラメラと音を立て赤く燃え盛る薪は森崎監督から役者親子へのメッセージだと感じた。
有名漫画の映画化だが、原作の枠を超えた独特の味わいを持つ秀作。
