「私は誰かの代用品でしかない」というThe Whoの『Substitute』的テーマは、恋人が留学中の会社員タムラと一年間の期限付きで彼女になった主人公エリコという話の大筋だけでなく、エリコが一年間の契約社員であることにも示されている。誰しも容易に受け入れることは難しい代替可能性の問題を、恐らくエリコは出演したＣＭに映り込む自らの姿をブラウン管の中に確認すること、またタムラもまた誰かの代用品でしかなかったという事実を偶然にも知ってしまうことで多少なりとも浄化したが、我々もそこに救いを求めることが可能かどうかは謎。いずれにせよダラダラと無為な時間を過ごす田中麗奈のアンニュイな姿（特にアパートの部屋に横たわりながら「生きられられられ⋯生きれない⋯生きられられない⋯わかんなくなっちゃった⋯。」って言うとこ最高）を捉えた市川準は、今作でもキメのショットを連発してる。とはいえ下品なブレッソンみたいなラブシーンは流石に笑うし、脚本のペラペラさは否めない。
