柏エシディシ

ロアン・リンユィ/阮玲玉の柏エシディシのレビュー・感想・評価

ロアン・リンユィ/阮玲玉(1991年製作の映画)
4.0
Bunkamuraル・シネマ渋谷宮下こけら落とし、マギー・チャン・レトロスペクティブにて。4Kリマスター版。
1930年代中国のサイレント映画時代に活躍しながら25歳の若さで自らの命を絶った伝説の女優ロアン・リンユィをマギー・チャンが演じる。
「アクションやコメディ映画の端役を演じながら、演技派に転向…私と似ているキャリアね!」というマギー自身のインタビューから始まる通り、伝記映画とこの映画自体の製作ドキュメンタリーが交互に挟まる変則構成。これがマギー・チャン自身とロアン・リンユィの女優観女性観、香港や中国圏の古今の映画論が折り重なり独特な作品に仕上がっている。
特に今となっては、自死を選んだロアンの悲劇ともう10年以上女優業から離れてしまっているマギーの決断に何か因縁めいたものも感じてしまう。
ロアンの容貌自体はマギーより親友を演じるカリーナ・ラウの方が似ている様に思う。(マギーとカリーナの因縁もまた想起してしまう)
しかし、現在多くのフィルムが失われてしまったロアンの仕事を"再現"するマギーチャンの優美さと迫力はやはり凄い。
マーク・カズンズの「ストーリーオブフィルム」でも引用されていたロアンの娼婦役を再演する件りなんて、もう……
女優マギー・チャンの世界的評価が本作を契機に上がっていったのも納得。
以前から観たかった作品であったが、今回劇場で可能な限り最高の画質で鑑賞出来たのは幸運だと思う。
1930年代をカラーに、現代のドキュメンタリーをモノクロームに"反転"した構成も興味深く、昨今の香港の映画界や中国映画の隆盛なども考えると奥深い印象を得られる。
時代設定も相まって、王家衛作品のマギー・チャンを好きな人も必見の作品であろう。ソフトや配信でもなかなか観れない一本なので、この機会に是非。
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