ユウサク

薔薇の葬列のユウサクのレビュー・感想・評価

薔薇の葬列(1969年製作の映画)
4.4
めっちゃアヴァンギャルドで実験映画みたいだなって思ったけどそういえばこの松本俊夫という人の実験映画を見たことがあったんだった。『石の詩』と『アートマン』って作品。
レストア版の海外での配給はニナ・メンケスのBOXを出しているArbelosがやっているみたいで、たしか日本の方がやってらっしゃると聞いていたので「あ、Arbelosだ」って思った。

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ギョッとするような文字演出や観客を弄ぶようなメタ演出で空間を引っ掻き回しつつ、主演ピーターを中心としたゲイカルチャーとそこに関連する反体制・学生運動的なカルチャーをメロドラマ?風に描いていた。物語パートの合間にメイキングのようなトーンの出演者・関係者インタビューを挟む構成なのが面白い。60年代社会運動の混沌を映画といい枠をグニャグニャ曲げていくことで表現しようとしたのかな?音でけえな〜と思ったシーンが作中作で、それを見た出演者たちも「耳がおかしくなっちゃったよ」みたいなことを言っていて笑った。
物語の方はあらすじを抜き出してしまえばよくある定型なのかもしれないけど登場人物をゲイにすることで同じく枠の拡大を図るというか、かえってそのシンプルさが好ましく感じた。わかりやすい回想などは挟まれず実際の人間の記憶の仕方に則すように断片的なカットで示すため、捉えどころは無いけど演出としてはそれくらい「今何が映った?」って間の方が好き。

そしてとどめの淀川長治……。面食らった。あの頃のメタ演出としてこれほど効果的な人選もないんじゃなかろうか。
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