囚人13号

薔薇の葬列の囚人13号のレビュー・感想・評価

薔薇の葬列(1969年製作の映画)
3.7
コマ落としやらメタやら一通りやりたいことやってる感じが良い。飢餓海峡みたいなコントラスト反転やフラッシュカット反復は定石だけど、本作は一貫性を持ってるので逆にそれだけで面白くなるだろうと。

アンダルシアの犬=シュルレアリスムっぽいというのは違っていて、それは映画を撮ってる時点でシュルレアリスムと矛盾してるからだが、おめめぶっ刺しが衝撃的だから面白いのではなくフレーム単位に分解された無数のイメージが(作為的な構造にはめられることで)あたかも観客の脳内で無意識的に結合されていくような快楽がある。

学生運動の過激な時代に生じたカウンターカルチャーというかアングラ要素は寺山修司を模倣してる感もありつつ、根底にはゲイという存在に対する一種フリークス(見世物)的な興味が映画を突き動かすエネルギー源となってるので、今じゃとても撮れない脆さに興奮する。

終盤の幽霊みたいな動きを見せる主観と野次馬の目つきは今となってはアヴァンギャルドを超えて、ゲイの生きづらさをそのまま象徴しているように見えた。あと淀川長治の出番がそのまますぎて笑う。
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