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二十日鼠と人間の一人旅のレビュー・感想・評価

二十日鼠と人間(1992年製作の映画)
5.0
ゲイリー・シニーズ監督作。

1939年にも一度映画化された、20世紀を代表するアメリカの作家ジョン・スタインベックによる1937年発表の同名小説を俳優のゲイリー・シニーズが再映画化したもので、大恐慌時代のアメリカを生きる二人の季節労働者の末路を描いた人間ドラマの力作です。

1930年代初頭、大恐慌時代の米カリフォルニア州を舞台に、理知的な男ジョージとその相棒で知的障害のある大男レニーが、他の季節労働者と共に農場で日々肉体労働に従事する中、やがて起きたある出来事がきっかけとなって二人の未来に暗い影が落とされてゆく様子を描いた“社会派+人間ドラマ”で、切れ者のジョージと頭の回転が鈍いレニーという対照的な二人の男が辿る悲劇的な末路を牧歌的な映像の中に描き出しています。

社会の底辺に身を置く労働者にとって特に厳しい大恐慌という暗い時代を背景に、いつか自分たちの農場を所有することを夢見て仲間と共に農作業に明け暮れる二人の素朴な生き方と悲劇的な行く末を、実の兄弟のように固く結ばれた二人の純粋な友情を軸に映し出した作品で、不条理な社会に呑み込まれてゆく労働者を彼らの目線で描き出した点では、1940年にジョン・フォードによって映画化もされたスタインベック著「怒りの葡萄」と相似形を成しています。

監督を兼任した主演のゲイリー・シニーズが実の兄のように相棒を守り抜く男を力演していますし、知的障害の相棒に扮した名優ジョン・マルコヴィッチが助演男優賞級の名演技を魅せています。
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