ただ流されるままに生きてきた、理髪師のエド。
ある日、客として知り合った男が漏らした商談によって、彼の渇いた日常は急速に崩れはじめる。
はじめて観たコーエン兄弟。
ホントに名前しか知らない作家だったけど、めちゃくちゃ好みだった。
白けきったザラついた空気。すべてを呑み込む黒い虚無。モノクロのシャープな画面が、まさにフィルム・ノワールな物語にバチバチにハマっている。
ジャンルは違えど、色々な映画のオマージュを思わせるところがあった。『スケアクロウ』(1973)とか『素晴らしき哉、人生!』(1946)とか。
この2作はキリスト教色が強いが、まるで真逆な暗示となっている。
意図的かはわからないが、神すら嘲笑うような展開は最後まで痛快だった。