ミッケ

アリスのミッケのレビュー・感想・評価

アリス(1988年製作の映画)
4.0
【内容】
話の根本は原作『アリス』の流れと同じ。ただし主人公アリスの設定や、その他登場人物の表現が異なる。映画全体がアリスの語りと台詞のみであるため、その他のキャラクターの台詞はアリスが代弁する形で話が進む。アリスの幼さからくる残虐性や人形たちの攻撃性が、直接的な表現はされていないものの作品全体のホラー要素を強めている。

【表現】
映画にはアリスである少女以外に人間は登場せず、その他のキャラクターは基本的に人形や物で登場する。人形たちのデザインは目が外れかけていたり、おがくずがこぼれていたり、少し古びたものばかり。アリスや人形が住む場所も汚く散らかり、錆びている。パペットアニメーションで動く人形たちの動きにもどこか不気味さを感じる。また、アリスの台詞・物音以外の音声・BGMがないため、その静けさもより不気味さを増している。ディズニー作品等の『アリス』で見られるカラフルでファンタジーな世界ではなく、木を中心とした、より現実世界にあるもので作られる『アリス』の世界はヤン・シュヴァンクマイエルのシュルレアリスムが良く伝わってくる。

【好きなところ】
この映画は、芸術作品としてとても完成度が高いと感じた。人形一つ一つに個性があり、骨・木・綿などの素材から作られたオモチャ達が瞬きをし、歩き、動く。人形達の衣装や家の中にある置物がどれも世界観を崩さずに調和していることで、「アリス」の世界から目が離せなくなる。徹底した現実世界のモノでの表現はもちろんのこと、アリス自身も現実世界の少女を再現しているという点も魅力の一つであると感じた。特に最後のアリスの台詞はハートの女王との関係を考えさせられる。
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