極楽蝶

細雪 ささめゆきの極楽蝶のレビュー・感想・評価

細雪 ささめゆき(1983年製作の映画)
4.5
男と女の”微妙な恋心”を描いた秀作。出演者も豪華です。この作品では時代を戦前の日本、昭和13年に設定していますねぇ。
80年代前後の市川崑監督のテイストいっぱいの作品で、この作品を観ていると市川監督の金田一耕助シリーズの場面と重なるところがある。例えば。冒頭で鶴子(岸恵子)と幸子(佐久間良子)が言い争うシーンでそれぞれをアップにしながら切り返す場面。ラスト近くで鶴子が蔵の中で荷物の整理をするために手拭いを巻いている姿は、「悪魔の手毬唄」のおはん婆さんではないかと思いましたねぇ(笑) 貞之助役の石坂浩二さんの台詞回しなんか金田一耕助そのもの(笑) エンディングが駅と機関車で終わるのもいかにもと感じました。
ところで、この「細雪」では、四姉妹の中でも三女の雪子に焦点が当てられているのが特徴ですねぇ。そして、本来は四姉妹の傍役の二人の入り婿の夫、鶴子の夫・辰雄(伊丹十三)と幸子の夫・貞之助が物語を豊かにしているように感じました。銀行に勤める辰雄は船場育ちの鶴子とは違い金銭にシビア、貞之助は色好みであることは船場育ちの妻と肌が合うようだけど、入り婿の立場に少なからず不満があり、外に幾人かもの愛人を持っている。何よりも貞之助と雪子とが微妙な関係にあることがエッセンスとして抜群です! 雪子の結婚が決まった後に、涙ぐむ貞之助はこの「細雪」の性格が一番出ているところだと感じましたぁ。
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