1950年につくられた小津安二郎監督作品。小津が松竹を離れはじめて新東宝で製作した作品なんだとか。日本の伝統的な価値観を大事にしニヒリストめいた夫に耐える姉とそんな姉に反発する現代的な妹の対比を通して戦後の日本の家庭崩壊を描いた文芸作品。原作は大佛次郎。
これまたずいぶんな結末でしたね。小津監督渾身の一作というところでしょうか。姉妹のお父君である笠智衆の存在をほとんど無き物にしちゃうくらいだもんな。まぁほとんど序盤、苔寺の椿の花が落ちる件で田中絹代が極端にまで首を落とす場面から良からぬ結末が待っていることはわかるんだけど、そっちかぁっていう。
にしても男の嫉妬は醜いわ。まぁたあのダメ夫を演じる山村聡が芥川龍之介みたいでね。狙ってるでしょう。となるとこのお話の根っこには谷崎と佐藤春夫の『細君譲渡事件』があるような気がしないでもないんだけれど、まぁないか。雨降って地かたまらないんだぁ。当時としてはかなり「えっ?」っていうかモヤモヤする人が多かったんじゃないかな? いや逆にそういう時代でもあったんかな?