半兵衛

舶来仁義 カポネの舎弟の半兵衛のレビュー・感想・評価

舶来仁義 カポネの舎弟(1970年製作の映画)
3.0
若山富三郎はその容貌やコミカルな演技も達者なためか、高倉健や鶴田浩二に比べるとアチャラカな任侠映画を担当することが圧倒的に多い。その中で最もおふざけを極めたのが本作。

何しろ主人公と二人の兄弟分の設定はアル・カポネの元で修行してきた日系二世のギャングという一ミリも任侠成分が入っていないキャラクター設定で、アメリカ暮らしが長いので全編英語訛りの日本語をしゃべったり、日本の文化や風俗などを文化のギャップを感じつつも謳歌するという喜劇的なストーリーが展開する。ただそうしたコメディが全く面白くないのがつらい、インチキ英語も定型的すぎて途中で飽きてくるし、提供される笑いも東映映画でよく見るレベルの低俗ギャグばかり。

話の内容もそんなアメリカン・ギャング野郎にも関わらず大和魂に理解を持ち、老舗ヤクザ一家に味方して彼らを潰さんとする新興ヤクザと戦うといういつもの若山富三郎映画で見る展開のため、設定の奇抜さは目立つものの結局他の映画と変わりばえがしない印象に。

それでも若山富三郎&山城新伍というおふざけコンビに渡辺文雄が加わっているのが新味で、先の二人が徹底的にふざけた演技をしていても渡辺文雄がクールに敵対するやくざを葬っていくので安心して見ていられる。また渡辺も時折二人に混じってコミカルな演技を披露しているのが楽しく、殴り込み前にどっちが高倉健でどっちが鶴田浩二みたいなやり取りをしているのが印象的。とはいえ渡辺文雄は本来クールな演技を得意としているのでこういうアチャラカでは浮いているのは否めないが。

そしてこの映画の最大の特色は後半、敵対するヤクザに連れ去られたFBIの女性捜査官を救うため主役の三人が殴り込みをするという、まさにトンデモな展開をするところである。「こんな映画ありえないよ」と叫ぶ山城に、「当たり前じゃ、こんなのは東映だけだ!」と返す若山…。正に東映絶頂期でしか有り得ない、ノーテンキなおふざけ世界。

ちなみにインチキ外国人設定にも関わらず英語が下手すぎる若山先生、『ブラック・レイン』は血のにじむような努力で英語を習得したのかと思うと泣けてくる。
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