Genichiro

パーフェクトブルーのGenichiroのレビュー・感想・評価

パーフェクトブルー(1998年製作の映画)
4.0
挿入歌&主題歌の虚無っぷりも今聞くと味わい深い。厳しい制作状況だったらしいので、バランスの崩れた表情やアングルもどこまで狙ったものかは分からなくなってくる。そのせいでより一層異様さが際立つ。今作は90年代…あまりに90年代すぎる。時代を真空パックしすぎなオタク描写もさることながら、アイドルに対する視線/価値観を全く相対化せずに進んでいくので今見るのにかなり厳しい部分もいくつかある。そして何より、終盤の種明かし…やはりあれは陳腐だろう。しかしまあ、こうした欠点もカルト作品ならではと言うべきか。完璧な作品が後世に語り継がれるわけではない。Tumblr→Twitter,InstagramなどのSNSを通過して今敏のシグネイチャーとも言うべきクローズアップが反復されることによって今作は公開当時とは全く異なる評価を得ることになった(霧越未麻が頬をなでるカット‼️あれを何度見かけたことか)。アニメーションであるにも関わらず繋ぎを意識させるような演出は今作で既に導入されていて、次から次に繰り出される幻想的なイメージによって継ぎ目はどんどん分からなくなる。「語るべきもの」の解体へと向かう熱量・情報密度に圧倒される。今敏のスタイルは長編デビュー作から確立されていた。
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