泣けるなあ。寅さんの失恋。田中裕子が本当にうまい。悪気はないのに思わせぶりな女性を演じさせたら、右に出るもんはいないってくらい。そりゃ、寅さんじゃなくても、「もしかしたら、俺に気があるの?」なんて思っちゃうかもしれない。
山田洋次がうまいのは、そんなトラと田中裕子のやりとりと、沢田研二と田中裕子のやりとりを、どちらも微笑ましく見せてくれる演出力。
正直、僕らの年代は映画を見始めた時にはすでにこのシリーズがマンネリと言われていて、若人が真剣に見る対象じゃなかった。それゆえに、大島渚や篠田正浩は真剣に見るのに、なんとなく山田洋次は『家族』で終わった人という目で見ていた気がする。
さすがに、何十年も何十本も松竹の屋台骨を支えた作品を撮っていただけはある。やっぱりうまかったんだ、という当たり前のことに気付かされて、申し訳ない気持ちになった。
正月らしい映画を劇場で見れて、本当に良かった。