浅野公喜

男はつらいよ 寅次郎春の夢の浅野公喜のレビュー・感想・評価

3.6
寅さん達の所にアメリカ人の薬のセールスマンがやってきて・・というお馴染みキヨシ・アツミ主演人気シリーズ第24作。「男はつらいよ」はテレビで断片的に観る事は有ってもフルでは未見だったのですが、「太陽を盗んだ男」や「アメリカン・バイオレンス」のレナード・シュレイダーが脚本に参加ということで興味を持ち今回初めてちゃんと鑑賞。

硬派な作品で知られるレナード、そして実は「悪魔の追跡」「悪魔の赤ちゃん」(!)が好きだと雑誌で発言していたキヨシ・アツミの組み合わせ故寅3が「(銃を構えながら)俺だってよォ、こんな事したくねぇんだよォ」と嘆く人情バイオレンスアクションが展開・・するわけではなかったのですが30年代のサンフランシスコが舞台の序盤の夢はノワール風でちょっと驚き。

ハーブ・エデルマン演じるセールスマンにしろ、とらやの面々にしろそれぞれに日本語・英語が流暢に喋れるわけではないのですがシンプルな単語と共に身振り手振りで積極的にコミュニケーションを図り交流を深める辺りは理想的な関係にも見え、言葉で思いを伝えるアメリカ人と思いを秘める日本人の対比が印象的。そしてやはりすれ違いが起こるのですがどちらが優れている劣っているではなく、日本の男は感謝を口にしないという言葉を受けお茶を貰ったらすぐにありがとうと言う博のように良い部分は残しつつ良いと思ったものは取り入れよう、という姿勢が感じられました。

また、凄くドラマティックな展開が有るわけではないのですが、さくらをはじめとする日本人女性の奥ゆかしさみたいなものも垣間見れたり、「目が青かったり背が高けりゃ立派なのか!」「足短いとダメなのか!」という寅3の訴えには日本人らしさを大事にしようと言いつつ日本人離れした要素を持つ日本人を崇めがちな昨今の価値観に対する強い反論というか、「それが日本人の特徴(=らしさ)なんだから悩む必要なんてないじゃねぇか」というメッセージを感じ取れたりとなかなかの収穫が有ったり励みになる作品でした。
浅野公喜

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