マト

レイジング・ブルのマトのレビュー・感想・評価

レイジング・ブル(1980年製作の映画)
4.0
冒頭、マスカーニのカヴァレリア・ルスティカーナの間奏曲が流れる中、対戦相手を待つ主人公がリングの上でガウンに身を包みながらシャドーボクシングをするシーンのなんという美しさよ。光と影、野心と不安、自信と畏れ、そして孤独…ボクサーの持つありとあらゆる感情を表現しているような神々しいカットだ。これまで観てきた映画の中でも指折りの美しいオープニングと言えるかも。
そしてそれは20年以上経ってスタンダップコメディアンとなり、肥えた身体を持て余しぎみに楽屋で一人ネタをリハする姿と同一人物とは思えないほどあまりに対照的だ。

というか拳聖シュガー・レイ・ロビンソンとのじつに6度にわたる激闘にクローズアップして作品を作ってもたぶんすごく面白いものができると思うんだけど、本作はそういう作風ではなく、元ネタが自伝らしいのでいわゆるスポーツ映画的な盛り上がりにはもうひとつ欠ける。けれどもモノクロ映像での試合のシーンは見応えがあるし、ドラマ部分は弟や妻との愛憎なども深く描かれている。なによりデ・ニーロの役へのこだわりがとにかく凄まじい。
ラモッタご本人は90歳を越えた現在も健在だというから驚きだ。


※追記:9/19にジェイク・ラモッタ氏が亡くなられたとのこと。95歳だったそうです。安らかに。
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