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レイジング・ブルのyu8cinemaあなたと映画のレビュー・感想・評価

レイジング・ブル(1980年製作の映画)
3.0
『レイジング・ブル』(原題:RAGING BULL)
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マーティン・スコセッシ×ロバート・デ・ニーロ×ジョー・ペシ。
この3人の初めての出会い。
それは今は時代錯誤となった強がりな男の病的なまでの“孤独”と“嫉妬”の物語。
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「カヴァレリア・ルスティカーナ間奏曲」の印象的なオープニング。
その後に映し出される中年のコメディアンが、若き日のジェイク・ラモッタを演じた彼だったとはどうしても信じられない。
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演技に対する驚異的なまでに徹底したこだわり。
それは今でこそ徹底した役作りといえばクリスチャン・ベールやマシュー・マコノヒーが話題に上がるけれど、その原点と言えるのがデ・ニーロという存在。
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『ララランド』の裏側に『カフェ・ソサエティ』があったように『レイジング・ブル』は『ロッキー』のアンチテーゼであった。
彼はダウンすることも他人に弱さを見せることもなかった。
それなのにロッキー・バルボアのように皆に愛されることもなければ、エイドリアンやポーリーのように支えてくれる人間も側を離れていった。
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人間の影の本質を描ききったスコセッシと演じきったデ・ニーロはさすがとしか言いようがない。
ただし、内容こそ今のジェンダーレス、社会的平等を享受している若い世代にとっては時代錯誤で受け入れがたい作品かもしれない。
是非、その人たちには映画に描かれた表層にある設定ではなく、その奥にある本質を汲み取って観て欲しい。