からすく

落下の王国のからすくのレビュー・感想・評価

落下の王国(2006年製作の映画)
5.0
撮影中の事故で下半身不随になったスタントマンはたまたま病院内を散歩中の少女に出会い、毎日おとぎ話を聞かせて仲良くなる
目的は自殺するため動けない自分に変わって薬を取ってこさせること
露知らぬ少女は男のおとぎ話に毎日想像を膨らませ続けるのであった

以前BSで字幕で観てBDで吹き替え版で再鑑賞
少女の想像のおとぎ話世界で話が進み、5才児特有の不可思議さと背景の映像美、ちょっとした笑いと可愛さに素晴らしい映画と思っていたが、吹き替え版で会話のやり取りを改めて聞いて最初の印象以上のスケールを感じた
全編超ハイクオリティなCGと思ってたらまさかのCGゼロで全部世界遺産をロケ地に撮影したと後で知った
わりとCG肯定派だったが本物のリアリティがここまで迫力が違うのかと自分を恥じた

おとぎ話について
男と少々のナレーションをバックに6人の戦士が提督への復讐のため旅をする話だが、その場限りの思いつきで進む話なので千夜一夜物語よろしく展開がコロコロ変わる
登場人物や背景も少女の想像の世界なので、戦士達の衣装がカッコいいんだか悪いんだかちぐはぐしていて、アンマッチ感が少女の頭の中を覗いているようで観ていて楽しい
男が話を中断すると現実の会話や状況が混ざり混んで来る演出も上手い
少女がもよおしてモゾモゾしているとお話の中の人物もモゾモゾし始め、終いには男の声で「トイレはそこ行って左だ」とせっかくの想像をブッた切られるのが秀逸

登場人物について
少女のアレクサンドリアが等身大の5才児として完璧過ぎて度肝を抜かれた
オレンジの大農家に家族ごと雇われ
この作品内では一番貧民の部類に入り、子供の頃から逆三角形顔でスマートな、行儀もよくいかにも育ちがいい天才子役ではない、ムチムチな赤ん坊がそのまま少し成長したような超「普通」の女の子
骨折したギプスで宝箱を持ちにくそうに、しかし決して離さず病院内をトコトコ散歩し興味を惹かれたモノに好きに着いていく姿は何も着飾っていない故に非常に魅力的である

男は「もっとお話が聞きたかったら頼みを聞いて」と薬品室にモルヒネを取りに行かせたり他の患者から盗ませようと頼むが運命の悪戯か毎度失敗する
半生を失った事が解りきって自棄になっている気を圧し殺して自然に接しようと努める姿が逆に観てて辛い

まとめきれないので残りはまた今度
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