かたゆき

落下の王国のかたゆきのレビュー・感想・評価

落下の王国(2006年製作の映画)
2.5
むかしむかし…、と言ってもここは20世紀初頭のロサンゼルス。
郊外にある静かな病院で、左手を骨折し退屈な入院生活を送る幼い少女アレクサンドリア。
彼女はある日、同じく両脚を骨折し入院生活を余儀なくされた青年ロイと出会う。
ほとんど娯楽などない毎日に退屈しきっていたアレクサンドリアへ、ロイは戯れに即興の作り話を聞かせ始めるのだった――。
「想像してごらん。絶海に浮かぶ蝶の形をした無人島に佇むのは、弟を殺された黒人奴隷、愛する妻を奪われたインド人、孤立へと追い込まれた爆発物専門家、貴重な蝶を標本にされた生物学者、今まさに弟を処刑されようという仮面の男……、彼ら5人はそれぞれの理由により邪悪な総督オウディアスに復讐を固く誓った男たちなんだ」
ロイが語り少女が静かに耳を澄ます彼らの復讐の物語は、次第に病院内の現実社会へとどんどんと侵食していって……。

そんなオリエンタルな雰囲気が濃厚に漂う映像と悪趣味紙一重の極彩色で美しい衣装の数々で描かれるのは、そんな摩訶不思議な世界が画面の端々にまで横溢するヒロイック・ファンタジーでした。
監督は、唯一無二の映像表現で独自の世界観を構築するターセム・シン。
確かに、この監督にしか描き出せないであろうエキゾチックな映像美が凄いことは認めます。
画面の隅々まで計算された構図に豊かな色彩感覚、全編にほのかに漂うどこかノスタルジックな雰囲気。
とはいえ、あまりにも我が道を行き過ぎていて、中盤辺りから僕はもうお腹いっぱいになっちゃいました。

それに、「こんな映像を撮りたいんだ!」という監督の情熱が先走りすぎたのか、ストーリーの至るところに「?」な部分がたくさんあるせいで、いまいち物語に入り込めません。
「だって、結局はロイの即興の作り話なんだもん」って言い訳されてもねー。
こういう荒唐無稽なお話だからこそ(映像だけじゃなく)脚本の細部にまで拘って欲しかったです。

観る者を圧倒するこの唯一無二のエキゾチックな世界観が好き!って人の気持ちも分かるのだけど、昔から僕はこの監督とはあんまり相性がよくないんだよね~。
うーん、星2.5、ごめんなさい!
かたゆき

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