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武士道残酷物語のmhのレビュー・感想・評価

武士道残酷物語(1963年製作の映画)
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下級武士だった飯倉家が、主君より受けてきた数々の無慈悲な仕打ちを、現代にいる子孫が日記を読む/連作短編形式で振り返るという趣向。
話のいくつかはとんでもなく鬱展開。
家臣に向かって「この世の地獄を味わわせてやる」とか平気でいっちゃう系の主君に仕えている中村錦之助。
封建社会自体が悪いというよりも、悪いやつがいたから封建社会が悪いという論法になってしまっているのがちょっと残念。
このあたり原作のニュアンスはどうだったんだろうね。監督の今井正は左の人なので、思いっきり反体制にしちゃってる。いまでいう自虐史観も少し顔をのぞかせている。ただ、この映画に限っていえば、それが奏功している。
ヘイズ・コードを破るアンチ西部劇がハリウッドを席巻するよりも前にアンチ時代劇を完成させてしまった。その衝撃は現代を生きる我々にも十分伝わってくる。
まあ、松竹の「切腹」が前年公開なので、単純に「切腹」フォロワーという可能性のほうが高そうなんだけどね。
ラストにちょっと救いを用意している。んだけど会社はやめないのかというツッコミどころ残すくらいなら、救いがないまま終わらせるべきだとも思った。ただまあ、このあたりの作劇作法は時代とともに変遷するものだしね。
まあ、終身雇用が当たり前の時代のことは、そうじゃなくなった世界にいる我々にはピンとこないのかもしれない。
面白かった。
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