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サルバドル/遥かなる日々のBalthazarのレビュー・感想・評価

サルバドル/遥かなる日々(1986年製作の映画)
3.5
慈善活動に来ている修道女のお姉さんが兵士たちにレイプされ、欲求の捌け口にされた後は容赦なく撃ち殺される。
十字を切って死を覚悟する。
このシーン、幼い頃に見て、そこだけ鮮烈に印象に残っているんですよね……。

子供には理解するのに早過ぎた。

しかし、エル・サルバドル「救世主の国」って意味だけれども、国名に似つかわしくなく、独裁とクーデターが繰り返され、国民同士が殺し合うこの国の歴史は血塗られていて救いは齎されない。

1970〜80年代この時期の中米は米ソ冷戦の犠牲者、代理戦争の主戦場で近隣のニカラグアもグアテマラもみんな同じような内戦状態だった。

アメリカの裏庭だからね。バナナ共和国なんて侮蔑されたり、アメリカ企業が儲けを得る場所だとしか思われてなくて抵抗するとCIAによって潰される、という感じ。
ユナイテッドフルーツ(チキータ)とかコカ・コーラが砂糖の関税政策や、昔ながらの大地主と小作農を見直す土地改革政策を巡って妨害すべく軍に働き掛けてクーデターを起こさせた、なんて話も聞いたことがある。
中南米の国々は自由と権利と民主主義をアメリカ合衆国とその資本主義経済によって長年抑圧されてきた。だから反米感情や左翼思想が強いんだね。

怒れる農民や労働者からは欧米の外国資本におもねる政府や富裕層に対して社会主義革命を起こす土壌があって、アメリカの背後を突こうとするソ連の思惑と重なったと。それを軍事的圧力を用いて堰き止めようとするアメリカ。
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