その

めしのそののネタバレレビュー・内容・結末

めし(1951年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

青い薬を飲んだ世界線のマトリックス。

誰もが羨む"良い奥さん"の主人公は、台所と居間を行き来するだけの女の一生に不安を覚える。
他所から「幸福な奥さんね!」と言われて「私、幸せそう?」とショックを受けるのに、不幸な奥さんだね、と見抜かれると怒る。そんな不安定さを演じる大女優原節子が見事で、あっという間に見終わった。

「めし」しか言わないくせに浮気疑惑のある夫に嫌気が差し東京に出る主人公。ここからの展開が超リアル。
今だったら、そんなクソ夫捨てて自分で働くわ卍!みたいな展開に絶対なる(そういうのブームだもんね)
でも当時は敗戦直後で、夫を戦争で亡くして死にものぐるいで働く職業婦人や、職業案内所に長蛇の列をなす貧困層を目の当たりにして、あ 私働けない やっぱりあの夫と暮らそう… ってなるシーンは必見。そう思っちゃう自分にちょっと絶望してそうで、林芙美子は上手いな〜と思った。

でも結局なんだかんだ夫と寄りを戻すわけだが、その過程が丁寧で、妥協よりもお互い寄り添ってるのがちゃんと伝わってきて良かった。ただ浮気疑惑は結局疑惑なの?どうだったの?(?)

今ですらキチガイ扱いされることもある未婚女性を、綺麗でウィットに富んだ楽しそうな女として描いているのが素晴らしかったが、作者が未婚女性かつ社会的地位を手にしてるからこそ描けるのかなーと思った。

最後のシーン、原作者林が途中で亡くなったため映画会社が補足したそうだが、セリフやキャラが急にチープになり呆れた。何も考えてない男がいかにも言いそうな"女の幸せ"。
まあでも現実には離婚も職場復帰も簡単にできるものじゃないし、この映画みたいに葛藤しつつ関係を再構築するのも全然ありだと思う。
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