千年女優

めしの千年女優のレビュー・感想・評価

めし(1951年製作の映画)
3.5
夫である初之輔の仕事に伴って東京から大阪へと移り住んだ女性で、不慣れな土地ということもあって家の中での生活に終始する岡本美千代。顔を見れば「めし」と言うばかりの初之輔に不満を募らせる彼女が、縁談が気に入らないと家出をした初之輔の姪を預かったことで日ごろから溜まっていた鬱憤を爆発させる様を描いたドラマ映画です。

戦前から戦後にかけて活躍した女流作家の林芙美子が朝日新聞で連載していた長編小説を成瀬巳喜男の監督で映画化した1951年公開の作品で、林の急逝で結末は想像で補う不幸に見舞われながらもブルーリボン賞で作品賞と脚本賞をダブル受賞するなど高評価を集め、後に「女性映画」の第一人者と謳われる成瀬の代表作のひとつとなりました。

メロドラマを通じて社会における様々な形の「女性」の有り様を描いてきた成瀬作品らしく、ごく一般的な夫婦のすれ違いから戦後社会における封建的な家父長制での夫妻関係の限界を浮かび上がらせます。作者急逝に伴う未完を製作の意向で埋めるちぐはぐさは無きにしもですが、公開から70年、今なお残る問題の一端を垣間見せる一作です。
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