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野火のたのネタバレレビュー・内容・結末

野火(1959年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

市川崑映画祭にて、塚本晋也監督トークショー付。
原作、塚本晋也版鑑賞済み。

最初のシーンで、分隊長がそこまで解説するか?というくらい細かに戦況や心情を教えてくれる。この心情の表現が、序盤他の兵士からもままあり、人間性や社会性を感じる。
この人間らしさが、戦況の悪化につれ次第に失われていき、最終的にはただそこに物質として在るだけの存在になる。動きもどこか無機物のよう。それがひたすら怖い。

兵士たちの描写に関して、白黒ということもあり、何よりも途中差し込まれる川辺の蟻のオリジナルの演出が絶妙に作用し、その後の大自然を蟻=兵士の這っている様子が印象的に映った。

いくつか原作を変えている部分があるが、最も違う点は、人としての一線を越えたか否か。
戦争を知る世代が作った映画だからこそ、越えてはならない一線を明確に描いていたように感じた。

人を撃つ際に主人公の葛藤がいまいち描かれなかったのが不思議だったが、田村個人としての人格を失い、集団を構成する一部になっている様を表しているのかもしれない。
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