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「野火」に投稿された感想・評価

Nholly

Nhollyの感想・評価

3.8
リメイク版を観てガッカリしたので、あらためてこちらを再評価。
船越英二の神演技。無駄の無いカット割り。
「鬼気迫る」とはこのこと。
傑作です。
完全に船越英二目当てで観た

海外の戦争映画によくあるグロテスクな生々しさというより、人の嫌な所が生々しくて嫌な気持ちがダラっと続いていく。


船越英二の不気味な笑顔や抑揚のない話し方は戦争による人間らしさに対する諦めを感じさせる
倫理観を見失っても格好悪くても意地汚く生へ縋り付く姿勢、気持ちを吐露するシーンが生々しくて良い。ラストの終わり方も私は好き。
小森

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リメイク版の方が好きだけど、こっちも役者のヤバ顔満載で良い。
清算

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3.6
市川崑監督による渾身の一作。役者たちの役への一致度が凄まじく、一体どんな演出、役作りが為されたのだろうか。カットごとのキメ感も美しく、白黒の地面、ただの影と化した日本兵たちもまた身に沁みるものである。
塚本監督のカラー版を先に観ていて大好きな市川崑監督もぜひにと思っていました

ストーリーはほぼ一緒だと思いましたがラストはこちらの方が重く感じました

船越英一郎さんが飄々とした中にも最後は自分の意思をハッキリと明確にしたようにも感じました
ミッキー・カーチスさんも見事な演技でズルい役や小賢しい役はほんと適任ですね

こっちの作品では船越さんが人を殺すシーンがあり戦争に近かった世代と離れた世代の違いかなとも思いました

またまた「ゆきゆきて神軍」思い出しながら観ました。。
1ssei

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4.0
二度目の鑑賞

塚本監督版の“生”感に比べて、市川崑版は客観的で干からびた印象がある
こいつらは劇的な救いの手が差し伸べられる訳でもなく、淡々と事務的に死んでしまうんだろうなという空気がずっと漂っている

塚本版の血肉の赤や青々しすぎるジャングルと対照的に、黒と白しかない森が代わり映えしないまま延々と続く
主人公もどこか最初から諦めムードであるのも、市川崑っぽいドライさな気がする
Gin

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2.9
正面からのアップが多かったし、アオリとかも多くて画の作り方は面白かったし勉強になった。

ストーリー構成は特に激動の110分ではなかったが、110分という時間を感じさせなかった。話に没入してみることができる。

「病気で部隊からも病院からも突き放された男の最期」ってテーマかなぁ
戦争によって、食糧のために人の命を奪うことになったり、恐怖から人を殺したりという負の流れを作り出してしまう恐ろしさを、重くしすぎない描き方で作り上げている。

もう一回見たらもう少し内容の理解が進んで楽しめるかも?
虚無感は塚本版より上に感じた。
それと、顔面の圧。これによる画面の圧迫感には参った。この息苦しさ。
だからこそ時折インサートされる広い画面は美しさや開放感というより観客と登場人物を徹底して放り出す不快な浮遊感がある。

それと亡霊が映るショットがあった!主人公が歩く姿と透過された死体のコラージュによってあの世を感じさせる。
マヒロ

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4.0
大戦中のフィリピンの島にて、肺病を患い隊を追い出された田村(船越英二)は、病院に行ってもそんな軽度の病気で入院させられるかと追っ払われて路頭に迷い、敵兵がすぐそこにいるかもしれない戦場をさまよう事になる……というお話。

塚本晋也監督のリメイク版は鑑賞済み。ハードコアな恐ろしさに満ちていた塚本版と比べて、こちらは戦争の無意味さや虚しさを前面に押し出したような気怠げな絶望感が作品全体に蔓延している。
主演の田村を演じる船越英二の心ここにあらずといった表情がまず凄くて、物語開始直後から既に心が壊れてしまっているかの如く虚な目をしている。この人は他の映画では軽薄なあんちゃんというイメージが強かったけど、こんなに重厚な雰囲気も出せるんだなと驚いた。田村という人物はそもそもどうしたいのかがよく分からず生きたいのか死にたいのかすら謎で、ただ惰性で周りに流されるまま動いているだけのように見えて、果たして彼が生き残って日本に帰国したところでもう元の人格には戻れないんだろうなという漠然とした恐怖がある。
ただこの映画が良いのは、そんな暗いテーマを扱いながらもノリ自体は割と軽妙なところがあって、結構笑えるシーンもあったりするのでひたすら陰鬱になるような事はない。

そこら中にゴロゴロと転がっている死体や、病んでここがどこなのかすら分からなくなってしまっている老兵士など、遠い異国の島で人生を終えて行った兵士たちは哀れの一言だし、敵兵にやられた人もいるんだろうけど主人公の田村も含めて「飢え」に苦しんでいる描写がかなり多くて、無理やり送り出された末に見放されて腹空かして死ぬっていうのはホント一番最悪だと思う。
塚本版では明確に描写されていた人肉食の話もしっかり出てきて、時流もあってかぼかされてはいるけどなかなか鮮烈。

戦争、と聞くと銃撃戦だったり兵器が出てきたりするようなイメージがあるけど、そんな戦闘に巻き込まれる事すらなくただのたれ死んでいくだけという別次元の恐ろしさを描いていて、お国のためにと最もらしい事言われた結果がそんな結末だったら悔やんでも悔みきれないし、戦争なんてものには断固NOを突きつけていくのが一番だなと改めて感じさせられた。

(2019.219)
pakhtakor

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3.0
田村一等兵が密林をゆく道中、敵兵の姿は見えないにもかかわらず、死は常に傍らにあった。南方戦線では日本軍の餓死者・戦病死者数が戦闘による死者数を上回ったという事実を踏まえれば、敵を介在させない死はある種「リアル」な描写であろう。
敵影をほとんど見せない戦争映画(例えばクリストファー・ノーラン『ダンケルク』)の効果の一つは、ヒーローの大活劇でも憎き敵軍を打ち破る物語でもない、無名兵士が集う場所としての戦場の再現にある。そして、その無記名性によって、戦争という巨大な出来事の得体の知れなさが顕わになる。
こうした観念は、該作を鑑賞する視点にも馴染みやすい。得体の知れない状況と、よくわからぬままにやって来る死。敵襲ですら、偶然の不運や避けがたい死の運命として描かれている。
大岡昇平の原作と市川崑の映画ではラストシーンが大きく異なる。市川崑が描いたラストは、巨大な理不尽の中で田村一等兵が自らの運命を自らの手で選び取ったものと解釈してよいのだろう。

…てなことを書きたかったわけじゃないんだが、なぜか筆が進んでしまった。マジメな論点への誘因がある作品だけれど、とぼけた妙味がこの映画の本領でしょう。人肉食(を論じることの無意味さ)とか、細部にわたるユーモアとか、言いたいことは他にもあります。とりわけ笑ったのは斃死した兵士の靴を剥ぎ取るシーンです。
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