イチロヲ

スイミング・プールのイチロヲのレビュー・感想・評価

スイミング・プール(2003年製作の映画)
3.5
南フランスの別荘へと活動拠点を移した女性推理作家が、屋敷をシェアする若い娘に感化されていく。頑迷な女性作家と自由奔放な娘の奇妙な交流を描いている、エロティック・サスペンス。

端的に言うと、虚像と現実がゴッチャになってしまう系統の物語。「モノづくり」を生業にしている人間が、創作のネタ探しを優先させた日常を送るうちに、虚実不明瞭な世界に陥っていく。

主人公の推理作家が、独自の観察眼で娘の言動を見るところが面白い。様々な解釈が可能となっており、個人的には「自分とは正反対の人物像を脳内に拵える現象」が機能しているように感じられる(手塚治虫の「ばるぼら」みたいなもの)。

随所に虚実の境界点のような場面が挟み込まれるが、とくに意識しないで観たほうが楽しむことができる。デヴィッド・リンチ的感覚を欲している人は迷わず観るべし。
イチロヲ

イチロヲ