IIDA

ヒックとドラゴンのIIDAのネタバレレビュー・内容・結末

ヒックとドラゴン(2010年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

何かを失った子供に観せてあげたいとエンドロールで泣きながら一番に思った。
それは身体だけでなく心でも、大切な欠けた何かに泣いて怯えている子供にこの作品と出会わせてあげたい。
そして、その子供には幼い昔の私も含まれる。
勿論、今の私、大人でもそれは同じ。

ヒックが仲間達より弱くて孤独な心を抱えていたからトゥースの気持ちに寄り添えた出逢い。
飛べないドラゴンは死と知って必死にない尾翼を鍛治とバイキング造船技術で創意工夫して創り出す中でヒックの真摯な努力と友情にトゥースが心を開いていくシーン。
飛び立てなかったトゥースがヒックの力を借りて初めて上空高く舞い上がり海まで速い戦闘機のように飛行するシーンは昔、アラジンの空飛ぶ絨毯の飛行シーンを観た時のように、一気に惹き込まれ感動しました。
劇場で観たい素晴らしい飛行シーン!

ドラゴンに対しバイキングが危険視していた固定観念をヒックとトゥースの出逢いが変えていく様は、私達が今いる社会がこれからも存続する為に得なければならない大切なもののようだった。
無知による古いあやまった固定観念を具現化したような父親が窮地を救われたこともあるが、正しい考えをちゃんと受け入れた姿にも大いに感動した。
これが出来ない大人達による不幸を沢山見てきたので、誤りを認めて正したヒックの父親、バイキングの古参達から学ぶことが多い。

ラストのヒックが片脚を失ったことがわかったシーンは息を飲んで涙をこぼした。
なんて、重い作品にしたのだろうと泣いた。
私の知るこの手のアニメはどんな危険も五体満足でハッピーエンドだったじゃないの?と……。

でも、……

ヒックが義足に気付き少しの時間心の悲しみを静かに見せるが傍におそらくヒックが目を覚ますまでつきっきりでいたであろうトゥース。
ヒックが目を覚ましたことへの嬉しそうに、まるで慣れた住処のようにヒックの部屋を飛び回るトゥース。
それはただ、ヒックが目を覚まして嬉しいだけでなく、片脚になったヒックの悲しみや気持ちがわかる半尾翼のトゥースだからこその元気づけようとする様子にもみえる。
義足で立ち上がりよろめきながら歩き出すヒックを支え一緒に優しく歩くトゥース。
ドラゴンなのに、なんて人間に合わせた優しい歩きをするのだろう。
家族や介護のプロでも難しいこともある優しい寄り添い歩き。

そうだ、……

ヒックがトゥースを助け出そうとしたのを理解したトゥースはヒックの最終試験に今まで自力で出られなかった崖を登り駆けつけた凄まじいシーンやラスト落下していくヒックを翼で守っていたシーン等、ドラゴンから人間への友情が発露した奇跡のシーンが亡くしたヒックの片脚に嵌る義足と重なり目の前が拓けたように、この作品が意図する友情、他者との共存の真の意味が流れ込むように理解出来た。

アニメはイメージを具現化するなら、トゥースのない半尾翼を心から理解するにはヒックの片脚によって補完されたようにも思えたのです。





この素晴らしい作品を私の拙い感想で汚したくない気もして……スコア満点だけで何も書かない方がいいかと思いましたが……自分だけの宝箱にしまうにはそうさせない、そうしてはいけない、何か強いメッセージ力があったので残しておきます。

ヒックとドラゴン、世界中に伝えたい最高傑作でした!

バイキングは危険がつきもの!怖がりな私に勇気を起こす掛け声と美しい漆黒のナイトフューリーに跨る勇敢で優しい少年が見せてくれた世界と人々のあるべき姿をいつまでも胸に忘れず焼き付けたい!
IIDA

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