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まほろ駅前多田便利軒のmoechangのレビュー・感想・評価

まほろ駅前多田便利軒(2011年製作の映画)
3.8
また観てしまった。というかまた読んだからまた観たが正しい。
何回も読んでるのに何回も読むし多分今後も読めば観る。スルメ。

原作をやりきってるわけではないし、ちょこちょこかわってるのでそんな手放しで褒めるようなことは出来ないけど、原作を読んでれば補完できるしキャスティングが良い。とても良い。
声がいいのかもしれない。セリフがいい作品だから表情も大事かもしれない。
とても丁度いい。そんなキャスティング。

三浦しをんさんの作品に共通するところがあると思うけど、ギリギリ本当にあるのかもしれないと信じられる救いや幸福をそっと渡してくるとこがある。

フィクションだからでしょっていう感情がゼロな訳では無い。けど、非常に生々しい。救われたいけど一人でいたい姿が何とも痛々しくてリアル。端折ってあるから原作を読んで頂きたい。
そんな状況、キャラクターの中から出る言葉はとても綺麗で汚いし、周りの言葉はあまりにも優しく首を絞める。
良くありたいけど自罰的、傷だらけだけど痛がらない。
多田と行天を中心とした狭い世界での触れ合いは、愛や希望について信じたいと思える綺麗なものを見せてくれる。

けど決して救ってくれる訳では無い。救われてもいいし、幸福になってもいいんだと気づくか気づかないか、気づいても気付かないふりをするか認めないかの人間を見せてくる。
この作品はそれの最たる例な気がする。
こんな幸せもあるし、こんなのも幸せ、こんなのだってきっと救いと呼んでいい。
色んな別解や答えに満足出来ないかもしれないけど、満足出来ないなら幸せになっちゃいけない訳じゃない。
寂しい中に希望がチラついて、全く押し付けがましくない。
救われるんだろうけど、幸福と呼ぶには何とも頼りない。

原作を読め。
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