shimiyo1024

上を向いて歩こうのshimiyo1024のレビュー・感想・評価

上を向いて歩こう(1962年製作の映画)
4.4
『上を向いて歩こう』の添え物映画として真っ当に評価されてないかもしれんが、これは素晴らしい…
舛田利雄、『完全な遊戯』『嵐を呼ぶ男』に続いて3作目
俺の好きな梅野泰靖がドラマーだわ、重要な役柄だわでありがたい
俳優としての坂本九見るのは初、ヤングな高橋英樹見るのは『けんかえれじい』に続き2作目、吉永は『キューポラのある街』に続き2作目、浜田も『キューポラ〜』『非行少女』に続き3作目、まだまだこの辺疎い
浜田はやはりジャケット着て前髪とんがってるとASKAっぽい

ドラマー志望の浜田をとりまくジャズシーンがフィーチャーされて、どういうわけか一般人が知らないであろうワード「ジルジャン」(ドラムブランド)が連呼されるし、劇中ジャズシーンかなりレベル高いし、一方の坂本九『上を向いて歩こう』が主題歌に加え劇伴にもアレンジされ、また序盤、一箇所だけながらも坂本によるミュージカルシーンあり(これがめっぽう良い)で、これは私が以前から論じてきたことだが、『嵐を呼ぶ男』でもジャズ描写はレベル高い部分もありながら、あくまでジャズ歌謡の枠内の主題歌とか、劇中の当時における洋楽一般としてのジャズの扱いとかにおいて、コンフリクトが起きている(このコンフリクトは映画全体として高く評価している『嵐を呼ぶ楽団』でも避けきれていないところであった)ことが、良くも悪くも特異で歪な表現になっていたが、今作はアメリカンスタンダードにもなったポップスとしての文脈で評価しうる『上を向いて歩こう』、および劇伴も中村八大担当とあって、全体としてまったくその種のコンフリクトが起きておらず、純度が高い
・全編、カメラ・撮影良すぎる、フィルム保存状態も最高
・神田、銀座、築地、大隈講堂大写しの早稲田大学、ラストの旧・国立競技場などのロケが素晴らしすぎる
これまで観た50〜60年代邦画の中でも、前述のクオリティ高さも相まって、ここまで"活写"と呼べるものはなかったのではないかというぐらいの瑞々しさ
特にゲリラロケの神田、銀座はマジで素晴らしい、アクション大きいシーン多いので一般人がガンガンカメラ見ちゃってるけど
一番グッときたのは銀座の東映ビル周辺のシーン、高速道路高架下の「西銀座デパート」(現・銀座インズ)、昔はこうだったのか泣

・運送屋兼ボクシングジム?という設定
・大皿が並ぶ中華パーティシーン
・『完全な遊戯』同様の競馬ネタ
なども面白い

終盤の坂本・浜田のすれ違い、カットバックによる盛り上げ泣
『上を向いて歩こう』唱和の大団円における、東京オリンピックを控えた一般民衆へのまなざしが泣けるカットバック、いやこの当時も決して良い社会ではなかったことはわかりつつも、少なくともハチャメチャになっちゃっている2020年の今、みんながこんなにも純粋でいられた時代を思い、涙…
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