ほおづき

八日目の蝉のほおづきのレビュー・感想・評価

八日目の蝉(2011年製作の映画)
3.5
不倫相手の子どもを身ごもった女性が、人工中絶後子供が産めない身体になってしまう。同じ頃に生まれた不倫相手の妻の赤ん坊を一目見ようと留守宅に侵入。そのまま赤ん坊を誘拐して逃亡するが、二人の母娘としての幸せな生活は長くは続かず逃亡生活は4年で終わってしまう。
その後、娘の方は本当の両親に実感を持てず、心を閉ざしたまま大学生にまで成長し家庭を持つ男の子どもを妊娠してしまう。

っていうややこしいおはなし。
 

昔この映画を観たときは、ヒステリックで自己愛しかない実母の方にずっとイライラしてた。カルト集団の教祖の女性にもただならぬ恐怖を感じて、追い詰められた挙句に思考停止になってしまった女性独特の怖さを感じていた。どちらのタイプの女性も周囲を不幸にしていくだけだから、実社会で遭遇したら絶対に近寄らないようにしようって思った。

結局は両人とも、引き金になった原因はクズな男たちと社会のせいではあるとは思うんだけど、物語の枠組みは無視して人間性だけを見るなら、この実母の神経質な性格と娘との相性の悪さを考えると、仮にこの子が誘拐されてなかったとしても結構な確率で育児ノイローゼになってたんじゃないかとは思う。
それは彼女が、子供へ愛情を与えるというより、子供からの愛情だけを欲しがっているように見えるから。
不倫されたとかは関係ないと思う。そもそもこのクズな男を選んでしまってる時点でその程度の女性だったのだと思う。

そして娘は違う心の傷を負って、その記憶は受け継がれ、娘もまた同じことを子供にするっていう連鎖が始まるのだと思う。
逆に言えば、この実母の母親との関係性や生い立ちの描写があったとしたら、たぶん同じことをやられてきたんじゃないのかなって予想できる。
たぶん実母自身も愛情をもらって育ってこなかったんだと思う。
与えられてこなかったものは与えることはできないから。



「日野OL不倫放火殺人事件」という事件を基にしてるみたいだけど、実際は子供が二人亡くなるという悲惨なことになっていた。
現実だとそうなるよねぇ・・・ってむなしい気持ちしか残らなかった。いくら愛する人の子だとしても、他人の女の子供を見たら殺意しか芽生えない気がする。そういう意味でも、この映画の主人公は創作なんだなと思ったけど、その事件に関して、世論は加害者を養護してたっていうこの映画と同じような構図になっていて驚いた。おそるべしメディアと大衆。


そんなことはともかく改めて観なおすと、底抜けに暗い作品だと思っていたこの映画もまた『永い言い訳』とかと同じようなコメディみの多い作品だったんだなって感じた。教祖とか小池栄子さんとかの演技や演出はもう笑いを誘ってるようにしか感じないんだけど・・・

最近『パーマネント野ばら』も観て思ったけど、小池栄子さんの演技ってすごく好き。