いかなる理由があっても、誘拐は許し難い。
失われた時間は取り戻せない。
それでも、希和子が薫を何よりも大切にしたことは認めてあげたい気持ちにもなる。
「その子はまだご飯を食べていません」
別れのシーンは切ない。
希和子は母親であった。
薫は間違いなく幸せな時間を希和子と過ごした。
ただ、母恵津子の苦しみは消えないし、恵理菜はその後は不安定な少女時代を生きることに。
短絡的な欲に走った恵理菜の父は、一生後悔しながら生きたらいい。
岸田も同類。
身勝手で無責任な男たちとしか映らなかった。
それと、赤ちゃんだけを置いて出かけるというのも現実ではあり得ないなと。
母親になる、親になることは、人間の成長過程で不思議なことかと。
種を残すという本能だけにとどまらない。
守るべきは子供の体であり心であり、とにかく子どもの幸せを願うもの。
子どもが笑えばそれだけで単純に嬉しくなる。
愛されて育ったことに気づくことができて。
お腹の子も愛しく思えるようになったのかと。
心に闇を抱える小池栄子演じる千草は不思議ではあったが、千種の優しさは邪魔をせずに恵理菜の心を和らげていく役割を十分に果たしていたなと感じた。