うたもち

イレイザーヘッドのうたもちのネタバレレビュー・内容・結末

イレイザーヘッド(1976年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

超雑に要約すると、「新米パパの受難」という話だと思った。

最初からかまされっぱなしで、脳を揺らされまくって、最後にはちょっと具合悪くなりそうな感じで見終わった。めちゃめちゃ面白い。

個人的には、主人公にかなり感情移入してしまって、その姿の哀愁に心惹かれた。
これでもかと言わんばかりに醜く造形された子供を、あそこまで世話したことを褒めたい。

まずオープニング。
とにかく、めちゃめちゃ格好良い。
主人公の横向きのショットに、隕石?のようなものが重なる。
主人公は画面外に行き、隕石がどんどん近付く。
まるでSFみたいだ。(SFなのかなw?)

合成された映像で口から臓物みたいなキモい物体が吐き出され、それが多分精子なんじゃないかな?と思った。
謎のおっさんがレバーを引いて発信して、ビューンて飛んで行く。名付けて「精子の操縦士」。
そうすると、自ずと隕石は卵子か精巣となるんじゃないかな?と思った。

ここで、子供が出来る。
暗い穴から見上げる井戸の中のような描写があるが、これは出産じゃないかな?違うかな?

で、主人公のカット。
まだ、子供が産まれたことは知らない。
工場?の近く、砂や岩が積まれた場所が地球じゃないところに見える。
なんかわからないけど、すごく美しい。(もしくは鬱くしい)。

家に戻ると、やけに色っぽい姉ちゃんに呼び止められ、女が呼んでいるよーって言われる。
この姉ちゃん、一眼見て絶対そういうことだろ、と思ったら、後々に、まあ案の定そういうことになった。
こういうところの演出が、面白いなと感じる。もよおしてるのがわかりやすいというか。他のリンチ作品でも、こういうファムファタル(役割として合ってるかはわからないけど)的な人は妖艶で素敵だ。

何故部屋の中に土があったり、引き出しの中に水を入れた容器があるのかはわからなかったけど、とりあえず、この世界では工場地区に近いので観葉植物的に土や植物をそのまま部屋の中に入れてるのかな?とか思っちゃった。
これはよくわからんw他の人の考察を参考にしよう。

女(妻となる人)の家に行って、お母さんお父さんと一緒に食事することになるんだけど、このシーンがマジで地獄で面白かった。
おばあちゃんもサラダ(?)混ぜ混ぜマシーンとして出てきて、タバコを吸うんだけど、それ以降は関係ない。
この家庭が崩壊していることを示唆しているのかな?
お父さんはやけに蔑ろにされてる。あと、あの小鳥の丸焼きの描写はなんだったんだろうwブリュブリュブリュって。
めっちゃキモいんだけど、めっちゃ気持ち良い。
イカれ具合が、悪魔のいけにえの一家を思い出してしまった。
主人公は、なんだかんだ流れで結婚することになる。(お母さんにベロベローってされてたりした。なんだそりゃw)

で、問題の赤ちゃん。
もう、どう考えたらこんなに気持ち悪く造形できるんだろうと思った。
ラストから逆算して、これが雛鳥のような形をしていると気がついた。
主人公は無関心な父親となり、奥さんに育児を任せっきり。
ジャムの瓶みたいなやつからジャムみたいなやつ食わせてるが、奥さんはもう限界が近い。
父親となったはずの主人公は、まだまだ自覚がなく、子供みたいな振る舞いだとも感じた。
(あの芋虫みたいなのはどう意味だったんだろう?趣味ってことかな?自然の収集というか。箱に入ってたので、注文していた品が店から届いたのかも)

限界を超えた奥さんは、出ていってしまう。
なんか、かなり描写を省いているのに、そうなってしまうのが仕方ないと思わせる演技が凄い。
主人公は、放置してたんだろうなあ、と感じた。
出ていく時、ベッドの下から大きなバッグを取り出そうとするんだけど、引っかかってなかなか取れない描写が長くて、笑ってしまった。これはユーモアだろう。

そこからが本番。パパの奮闘記だ。
赤ちゃんのお熱を慣れない手つきで測ったり、そうしたら微熱で、いきなりブツブツが現れて(これがめちゃんこキモいw)、加湿をしてあげながら面倒を見る。
これって、不安の表れなのかな?とか思った。自分がもし、こんな小さな赤ちゃん(普通の)がブツブツ出来て熱出ちゃったとしたら、不安になるなあ。
ここらへんのシーンで、主人公が出て行こうとすると赤ちゃんが泣いちゃうのが笑えるし、主人公が少し不憫だ。

本作で一番謎の、コブ取り爺さんならぬ、コブコブ姉さんの登場。
エアコン?なんだろうあれは。馴染みがなくて名前がわからないんだけど、機械の中にステージが現れて、その中でめちゃめちゃニコニコしたお姉さんが辿々しいステップを踏んでいる。
自分の解釈だと、これって精子を踏みつけてるんじゃないかな?と思う。
だって最初のと同じ形だし。なんでそんなことするか?それはわからんです。

で、何故か若干湿っぽくなり、歯軋りがひどい奥さんが帰ってきて隣で寝てるんだけど、めちゃくちゃ睡眠を妨げてくるw
主人公が奥さんから精子(と思ってる)をビョルンビョルンと取り出すので、ここで浮気が判明したんじゃないかと思う。
自暴自棄になった奥さんが、不特定多数と関係を持ったんじゃないかな?とか考えたりした。

そっから、ストップモーション・アニメーションでヒルみたいなのがくねくねして、その開いた口にカメラが入ってゆく。
これは、主人公の心理描写なのかな?めっちゃ落ち込んだ〜みたいな。
こっから画面は一気に暗くなって、沈んだ主人公が少し可哀想に思う。

隣人の美女が来て、泊めてと言われる。
誘惑されてる間、赤ちゃんの口を押さえてるのが最低なんだけど、凄く気持ちはわかる。
この映画で、決定的に主人公が赤ちゃんを邪魔なものだと思う瞬間だ。
セックスシーンも見もので、女は醜い赤ちゃんを見ながらも、主人公と快楽に溺れてゆく。俺が彼女だったら、もしもを考えてすぐに帰る。怖いしw
ここで、醜く見えてるのは主人公だけなのかな?とか考えたけど、そうじゃない方が面白いので、あの怪物のような赤ちゃんにも臆さずにセックスに文字通り「溺れた」と考えてみる。

また惑星が現れた。
少し動揺する女。
コブコブ女が歌い出す。
「天国ではすべてがうまく行く」
これはどういう意味なんだろう?と考えたけど、なんか率直に、主人公のセックス中の全能感、浮き足だった感情の歌なのかな?とか思う。自信を取り戻したのかな?
で、コブコブ女のコブは、ここくらいからもうタマキンにしか見えない。

そこからのシーンは、現実に引き戻されて、罪悪感に苛まれているのかな?と感じた。
主人公の首がビュィーンって飛んで(w)、中から棒が出てくる(これはなんだろう、ペニス?)。その棒、一時停止して見てみたけども、サナギのようにしか見えない。あれ、あの芋虫みたいなのがサナギになって、主人公の中からボワっとしたんかな?
かと思えば、主人公の頭はあの赤ん坊の顔になる。木が生えた岩から流血し、これは率直に言って、経血を思い起こさせた。それか、処女を奪った時の記憶?妻への罪悪感なのかな?違うかな?
凄い悪夢的。

転がった主人公の頭は外に放り出され、それを拾った男の子が鉛筆工場(?)に持っていった。職員は、その頭を削り取って鉛筆の頭に装着する消しゴムにした。
なんだそりゃ!!!!!ここがめちゃくちゃ面白かった。
これって、頭の中の記憶を消し去りたい!って気持ちなのかな?そういう幻想、夢なのかな?

消しゴムのカスが舞う中、主人公のシーンに戻る。
窓の外で行われる暴力を見たりしながら(これが、最初の方のシーンで出てきた水たまりのようだったんだけど、関連性がわからなかった)、物音に聞き耳を立てる。
そう、隣の美女じゃないかとソワソワしているのだ。
このくらいになってくると、たまらなく主人公が愛おしい。嫌な予感しかしないんだけど、なんだったらあの女と幸せになってくれとさえ思う。

待ちに待って、やっと美女が帰ってきたが、彼女は男連れだった!
恐らく娼婦のような女で、主人公は気紛れで一夜を共にしたのだ。(のかなあ?)
これはショック!イチャコラしながらこっちを訝しげに見る美女。
彼女の目には、主人公の顔があの赤ちゃんの顔に見えていた。

完全に自暴自棄になった?主人公は、ずっと包まれていた赤ちゃんのガーゼをハサミで切ってゆく。
すると、中身は臓物のようなもの??だった。
ってか、臓物が精巣のようなものしかなかった。
だって切ると、血と一緒に白濁色の液体が出てくるんだもん。
めっちゃグロい!でも気持ち良いシーン。
プルプルしながら、赤ちゃんからモリモリとゲロのようなものが溢れてくる。もうここまで来るとパニック。なんだこれは!!って感じだった。
でも映像に食い入るように魅了されて、息をするのを忘れてしまうほどだった。
主人公のアップ、血を噴き出す赤ちゃん(ろくろ首みたいに首が伸びてる)、バチバチと漏電するコンセント(?)、それが何度も映し出され、巨大な赤ちゃんの顔がぶわん、ぶわんと浮かんでは消える。霊体?主人公を責め立てているのだろうか?この顔がちょっと可愛い。

最後は惑星がひび割れ、どんどんと壊れていき、巨大な穴に引き込まれた後、最初に出てきた「精子の操縦士」が再び出てきて、レバーが火花を散らし、危険を知らせるようなブザーが鳴り、顔のアップ(苦しんでいる?笑っている?)が映り、真っ白になる。

コブコブ女が主人公に笑顔で抱きつき、目を閉じた主人公が映し出され、映画は終わる。

エンディングで流れる、明るい曲が少しチープで、なんかサーカスを見た後のような余韻を残す。
この切れ味は、めちゃめちゃ気持ちが良い。

結局、何から何までわからなかったのだけど、こんなふうに見た。
めちゃくちゃ面白かった。
これから、いろんな人の解説や感想を見ていこうと思う。まあ、自分の解釈も結構好きなんだけど。

デヴィッド・リンチ大好き!
うたもち

うたもち