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黒い画集 第二話 寒流のodyssのレビュー・感想・評価

黒い画集 第二話 寒流(1961年製作の映画)
4.0
【凄惨な印象が残る】

池部良が銀行という機構に翻弄される銀行員を演じています。

急速に成長していた池袋の支店長に抜擢されるところから話は始まります。この映画が作られた1960年代の初頭、池袋は渋谷や新宿に比べると盛り場としては新興地だったんですね。

そしてその池袋で料亭を切り盛りする美しい未亡人(新珠三千代)が店舗を増築するための資金を借りに来る。実は池部良は、妻が病気がちで家庭がうまくいっていない。というわけで支店長と未亡人は関係を持ってしまう。

そこに常務が絡んできます。常務は大学の同窓生である池部良を支店長に抜擢した人間ですが、非常な女好き。その常務が美しい未亡人に会って・・・・。

こういう、上役のいいようにされてしまう悲惨な銀行員の人生を、池部良がしっかりと演じています。また、最初は彼と結婚も考えると言っていた未亡人が、常務の登場で態度を変えていくところも、女心と秋の空というか、のし上がるために男を利用する料亭女将のしたたかさがよく出ています。

ありがちな筋書きかも知れませんが、見ていて主人公が上役や女に翻弄されていくところが非常にリアル。見終えた後、いたたまれなくなるような、凄惨な感覚が残ります。この映画がよく出来ているからこそでしょう。
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