冬の亡霊

プリンセスと魔法のキスの冬の亡霊のネタバレレビュー・内容・結末

プリンセスと魔法のキス(2009年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

呪われたカエルがキスで王子に戻るという有名な童話をなぞったストーリーかと思いきや、キスしたら自分までカエルに!?

カエルの姿のままのシーンが多くて舞台も沼だったり仲間もホタルとワニくらいなので絵的に地味ではあるのだが、キャラの個性を見ていればそんな事は些事だろう。
CGだけでは不自然になりがちな水の表現に、手描きディズニーの良さを再確認できる秀作。
とはいえ、興業的には思わしくなかったのか、今作の後、くまのプーさん(2011)以降はディズニーは手描きアニメーションからほぼ撤退しているのが現状らしい。

音楽が素晴らしく、舞台がルイジアナ州ニューオリンズということもあり、いわゆる黒人音楽(ジャズやブルース)が前面に押し出されており、ヒロインも黒人である。現実的だし行動派で、貧しくも飲食店を持つ夢の為に頑張る姿は応援したくなる。ただ、セリフ上は「愛が大事」と説いているものの、貧しさ故に店を持てなかった父を見て育った分、努力して金を得る事の大事さがやや際立ってしまい、やや大人向けな印象。
ニューオリンズ要素としては他にも、ヴードゥー(呪術≒黒魔術)やマルディグラ(カーニバル)やベニエ(砂糖まぶした四角いドーナツ)等、きちんと描き切っていてくれて好感。
ヴードゥーと言えばゾンビだが、ゾンビ要素はほぼ無い。その代わり、ファシリエ(今作におけるヴィランズ)が墓場に飲み込まれていくシーンは子どもが見ればトラウマ必至。

王子と結婚したらプリンセス、というロジックが面白い。

王子自身が金を持っているわけでもなく、働かずに一生楽して暮らしましためでたしみたいな終わりでないのは現代に寄せて来てるのだろうか。

ディズニー映画には珍しい友達の死。レイモンドがエヴァンジェリーンの隣に輝く星になる、というのはとてもロマンチックで、悲しみを凌ぐ感動がある。