ハシオ

赤い殺意のハシオのレビュー・感想・評価

赤い殺意(1964年製作の映画)
3.5
藤原審爾の同名小説を原作として1964年に公開された本作。
監督は巨匠・今村昌平です。

舞台は仙台。
主人公の高橋貞子(春川ますみ)は旧態依然とした旧家主人の妾の孫で、女中として働いていたが、その家の嫌味な御曹司・吏一(西村晃)に半ば強引に犯され夫婦に。

とはいえ、籍すら入れていない夫婦関係のため、息子を設けるも貞子の扱いは低いまま…。

そんなある夜、夫が出張中のタイミングで強盗に押し入られ、しかも貞子はレイプされてしまう…というところから物語は展開しています。

いや~、女性の強さ、強かさ描くという『にっぽん昆虫記』と似たようなテーマを扱っているのは知っていましたが、いきなりレイプという展開には驚いた笑
今村監督の下品(いい意味で)な作風というか、人間の“性”というものにド直球で向き合っている所が好きですね~。
そして今回は仙台が舞台なので、登場人物は全員宮城(東北?)訛りなのですが、その訛りも凄く自然でドキュメンタリー映画を見ているような気分になりました笑

役者陣も見事◎
貞子役の春川ますみは真ん丸と太っていて、見た目同様おっとりとした性格なのですが、反面どこか妙に艶めかしく、色気を画面から放っています。
(ただ、ラスト終盤の美容院のシーンは化粧した伊集院光にしか見えなかった笑)

また、夫役の西村晃は「食う、風呂、寝る」しか言わないようなThe ダメ夫で、
外ではペコペコする小心者にも関わらず妻や不倫中の恋人にはやたら高圧的という嫌なキャラクターとして描かれています。(楠侑子演じる恋人もこの男のどこが良くて付き合っているのか謎)

そんな風に、男は常に強引でマチズモ的に描かれていますが、この映画の興味深い所はそんな男たちも結局は女がいなければどうしようもないということをしっかり描いている点。
それは貞子をレイプした男も、夫もそうでしょう。
貞子が出ていく素振りをすれば慌てふためき、ラスト近くの夫婦の営みのシーンでは「おかあちゃ~~ん」なんて甘えたりする。
なので、必ずしも昭和的な価値観で男どもが威張り散らしているのを描いてるだけでは無いと思うのですが、まぁしかし実際女性がこの映画見るとどう思うのかは気になるところ。

そういえばこの映画、蚕が頻繁に出てくるのですがそれも色々考えてしまいますね。
蚕=一人では何もできない生き物(これまで自立していなかった貞子)という意味なのか…。
それと、演出として時折挿入されるおばあさんたちの東北弁のヒソヒソばなしが何言っているのか不明で気になりました。
あれは解読してほしいな。
ハシオ

ハシオ