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フラッシュダンスのnetfilmsのレビュー・感想・評価

フラッシュダンス(1983年製作の映画)
3.3
 ペンシルベニア州ピッツバーグ。女は昼は製鉄所の溶接工としてむさ苦しい男どもと共に汗を流し、夜はナイトクラブのダンサーとしてスポットライトを浴びる2重生活を続けている。18歳のアレクサンドラ(ジェニファー・ビールス)の夢はバレエ・ダンサーで、元倉庫だった場所に愛犬グラントと生活しながら、身を粉にして働きながらチャンスの日を夢見ていた。同じ店でウェイトレスをしている親友ジェニー(サニー・ジョンソン)はプロのフィギュアスケーターで、また彼女の恋人でコックのリッチー(カイル・T・ヘフナー)はスタンダップコメディアンを目指している。殺風景な部屋に愛犬と2人暮らしで、慎ましく暮らすアレックスのシンデレラ・ストーリーを描いた今作は、当時のMTV人気も手伝い、特大ヒットを記録した。彼女の夢を鼓舞するのは、かつて世界を股に掛けるダンサーだったハナ(リリア・スカラ)だ。彼女の才能を買っているハナは、名門ピッツバーグ・ダンス・アンド・レパートリー・カンパニーの団員オーディションに応募するよう勧めている。一度は願書を取りに行ったものの、バレエのレッスンを積んだ志願者たちを見て躊躇してしまうアレックスは夢への階段を前に躊躇している。

 今も昔も80年代を象徴する映画とされているが、はっきり申し上げて物語自体にはそれ程魅力がない。バイタリティ溢れる少女はダンサーになりたいという大志を抱くものの、ナイトクラブで男の好奇な目に晒され踊るだけで彼女のダンス・スキルが伸びるとは思えず、元スター・ダンサーだったハナも彼女の何に大きな魅力を感じているのかさっぱりわからない。アレックスの夢はせいぜい親友のジェニーやリッチーと同じレベルの淡い夢で、然しながら若い頃には無謀な夢を持ってしまうのが若さの特権で、若者たちの向こう見ずな夢にBETしたくなる。アレックスの住む殺風景な部屋にはまったく生活感がせず、まさに今作の「虚無」を象徴しているように思えてならない。迸るような若さと滾るような美しさを併せ持つまだ初々しいジェニファー・ビールスは当時のセックス・シンボル的な魅力満点で、白人男性たちの欲望を文字通り清濁併せ呑むのだが、中盤から彼女だけがシンデレラ・ストーリーを駆け上がり、周囲の人間はただただ気の毒なほど不幸になっていく。Irene Caraの『Flashdance What A Feeling』も何だか『スチュワーデス物語』にしか聞こえないし、クライマックスのジェニファー・ビールスのダンスの頭抱えたくなるような完成度の低さも含め、ひたすら印象に残る映画ではある。唯一例外的に中盤に出て来る路上でのクレイジー・レッグスのブレイクダンスは、あの場面をVHSやLDで繰り返し見返したというほど初期のHIP HOPにはなくてはならない名場面である。
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