もとまち

ナインスゲートのもとまちのレビュー・感想・評価

ナインスゲート(1999年製作の映画)
3.8
チープで大仰な物語。まるで70年代のB級オカルトホラーのような内容だが、それでもこれほど面白く見れるのは、ひとえにポランスキーの演出力の賜物だろう。相変わらず上手に映画を撮る人である。音響やカメラワークへのさり気ない工夫が本当に見事で、空間の描き方やキャラクターの動線ひとつで不穏な空気を作り出して見せる。脚本もなかなかブラックな笑いに溢れていて、登場人物たちとの間で交わされる会話にもいちいち皮肉が効いていて面白い。成金探偵を演じるジョニー・デップの惚けた存在感も結構好き。あとバイクに乗った“守護天使”ことエマニュエル・セニエ。今回もポランスキーの嫁自慢が大いに発揮されている。特にワイヤーアクション(?)で空から舞い降りてくるところは大爆笑しました。

オチは投げっぱなしジャーマンだけど、あれ以上描く必要が無かったんだろうな、と。描いてしまえばさらにチープな話になりそうだし。『フランティック』同様、題材がB級でも語り口に気品とユーモアがあれば面白い映画は作れるんだと教えてくれる作品であり、いたく感心しました。
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