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バットマン リターンズのShoIkomaのレビュー・感想・評価

バットマン リターンズ(1992年製作の映画)
3.8


 約20年ぶりの再観。僕の映画原体験はこの作品かもしれない。それくらい覚えていた。

 敬愛するティム・バートンらしさが詰まった作品だ。僕がティムを好きになったのは『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』や『シザーハンズ』を観てからだと思っていたが、この作品でお気に入りだったシーン全てが“ティム節”全開なものだったと気付かされた。グロテスクで、人をバカにし切った演出、でもそのどこかに気品がある。気高さを知っているからこそ、それを「下らない」を言える。ただ教養がないものがエリートを僻むのとは訳が違う。

 ジョゼ・モウリーニョみたいな顔の悪役の小物感がたまらない。こういうキャラも、息子大好きという点もポイントだ。実力者だけど大物になりきれないキャラの構築、描写のうまさはさすがティムだ。

 グロさ、怖さも、欧米の御伽噺などがベースにあるようで、ティム自身が子供の頃感じた感情が下敷きになっていることが伝わってくる。幼い頃から凡人とは違った解像度で世界を観察していたんだろう。

 セリーナ・カイルが変身前に感じていた孤独や苦悩は、現代でさえ多くの女性が共感するだろう。同時に、ブルースが抱える複雑な思いも、この当時の男性がただ単に仕事、金、セックスにしか興味がなかったわけではないことを感じさせる。解像度に加え、観察者としての「画角の広さ」もティムは持ち合わせている。

 ニュースによれば、近々マイケル・キートンがこの作品で演じて以来のバットマン=ブルース・ウェイン役を再演するかもしれないらしい。DCの作品群も複雑化しているけど、思い入れがあるこの世界線のバットマンがどんな運命を辿ったのか。見届けたい。
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