この作品を見たのは、ロンドンのシネマだった。
ロンドンの上映ではモザイクがなく、だからこそいやらしさもなく、なんとも言えぬ迫力と臨場感、そして、映画の凄まじい情熱と緊迫感に、全てを持っていかれた気がした。プロットは単純で、撮影場所も限られていて、役者も多く出てくるわけではない。けれども、トニー・レオンとタン・ウェイのセリフより多く語る「対話」は、まさに芸術であり人間であり愛だと思った。
日本にいる映画好きに薦めたが、どうやらモザイクがかかっていたようだ・・・それでは、この作品に集中できず、また却って卑猥なのではと、とても残念に思った。この作品にモザイクとは・・・本当に訳がわからない。いまだに理解不能である。
あれから15年経った今でも、この映画をふと思い出すことがある。
それは、男女について考えるときだけではない。独裁者について考えるとき、歴史を知るとき、肉体について考えるとき、芸術について考えるとき、暴力について考えるとき、と様々だ。それは、この作品から、私は多くのものを得たからなのだろうと思うようになった。