工業排水から生まれたヘドラと、核汚染から生まれたゴジラは、両者ともに無責任な人類を親とする悲劇の兄弟的存在だった。
原点回帰の社会風刺テーマとサイケデリック映像がギッシリの唯一無二の一本。
冒頭、極彩色の女性シンガーの映像とともに流れるテーマソング「かえせ!太陽を」一瞬何が始まったのかと思う。これは特撮ソングでは有名で、私も曲だけは聞いたことがあり、その脳天気な曲調と不気味な歌詞の異様さで記憶に残っていた。
実際に映画の本編を見たら、これがまた最初から最後まで強烈で、ピンク・フロイドのザ・ウォールみたいなアニメシーンの映像も、ゴジラに焦がれて詩を詠む小学生も、ヘドロを浴びて死ぬ雀荘のサラリーマンも、全てが言われ伝えられるとおりで、強烈で恐ろしい作品だった。
クラブのシーンや富士山麓でキャンプファイヤーをしてる若者らにも、日本がかつて確かにアメリカのヒッピーカルチャーから受けた多大な影響を強く感じさせる。
ところで自分は怒髪天というバンドのファンなのだけれども、そのリーダーの増子さんがヘドラを強く推していて、確かに観てみるとなるほど、この映画のゴジラもヘドラも、共に社会に中指を立てるパンクな存在だった。昔はこうしてヒッピーもロックも世の中に中指を立てるのが仕事だったの、いい時代ですよね。今は何なんですかね、首相とメシなんか食ってる場合じゃないんだよ。うちらの未来には壊れた原発と消えた年金と見えない老後だけがあるというのにロックミュージシャンでさえ官僚を怒ってられないんだって。アホくせー!となにか脱線したような気がしなくも無いですが、怪獣プロレスはほどほどで政治色が強いゴジラ作品なのでまあこんな気持ちになりますね。
90分とは思えない疲労だったけど文化的に貴重な映画だと思う。とても勉強になるので見てほしい。
もとい、こういうカルト映画として有名になってしまってる作品って、文章の批評があちこちに多くあるので、読んでるうちに現物を見たつもりになっちゃうでしょう?
賢者は書物から、愚者は経験から学ぶ、というかもしれないけれど、それでもちゃんと実際に自分で見られる環境にいるのなら、映像を体験したほうが!いいですよ!芸術は体験そのものなんですから!(自戒)