ギャス

ピアニストのギャスのレビュー・感想・評価

ピアニスト(2001年製作の映画)
3.2
なかなかに強烈な恋愛映画、と言っていいのか迷っていたら、ハネケ自身がメロドラマのパロディと言っていたらしく、少し納得。
恋愛映画として決してこちらの思うように展開しない。笑えるところはひとつもないが、観た後に「何を見せられたんだ」と冷ややかに笑えるかもしれない。
しかし、「これはありえない」と笑い飛ばすこともできない。

ネタバレ
抑圧された感情というものがどこまでこじれるのかを試す実験映画のようだった。
シューベルトや父親の精神的な限界を受け継ぐような彼女が「私は感情がない、知性が優先される」と(思い込むことで)、ギリギリの状態で社会を渡ってきたところに現れた青年は、
とうとう彼女の押さえ込んでいた激情のスイッチをオンにしてしまう。
手紙の内容は支離滅裂に思えるが、自分への罰や母親への復讐のよう。半分は妄想なのだろう。
一般的な男として軽やかに爽やかに日常に戻る若者を見て、結局自分を傷つけ(目を覚まし)去る彼女は、またピアノ教師に戻るのだろう。彼女にはピアノしかない。
刺したのがピアノを弾くときに一番使うような筋肉の場所だったのは気になるが。

ピアノレッスンもそうだったが、なぜピアノというものはセンシュアルなのだろう。
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