ニカイドウ

シンドラーのリストのニカイドウのレビュー・感想・評価

シンドラーのリスト(1993年製作の映画)
3.8
なんやねん…1時間くらい全く面白くない。変な男シンドラーが思いつきで会社を立ち上げ、思いつきでユダヤ人を雇って、賄賂をばら撒き女を抱く
…俺の文才の無さを加味しても、このあらすじじゃほぼほぼ『ウルフ・オブ・ウォールストリート』やん!笑
更に、片腕の老人を会計士が雇った事を怒るクソ人間シンドラー…
けど、そこが物語の起点。
その老人がナチスに意味もなく殺される。めちゃくちゃ急展開。
「老人はウチの工場の熟練工やった!」って怒るシンドラーに「ん?」となりつつも、そこからはもう怒涛のように、ユダヤ人がナチスに…まるでゴミのように虐殺されていく…
シンドラーの出ているシーンは、かろうじて「これは映画や」と思える。これはリーアム・ニーソンの演じるシンドラーやと。
けど、見るに耐えないシーンがどんどん流れてい
く。白黒なんも相まって、まるで戦時中の記録映像を観ているような気になってくる。
辛い…
その中でも、白黒の中で赤い服の少女に目が行くシーンには圧倒された。息をするのも忘れるくらい美しくて残酷で悲しいシーン。
片腕の老人の話まででシンドラーの性格を見せておいてのこのシーン。シンドラーの心変わり(?)の理由を言葉じゃなく映像で、視覚で理解させる荒技。
…色のない世界。
もし、この白黒映像に残酷さを和らげる以外の意味があるとしたら?
ここにこそ、スピルバーグ監督のファンタジーが隠されているとしたら?
シンドラーの目…いや、彼の目を通して観ているスピルバーグ監督の目には、戦争をしている世界、そこに暮らす人々には色がないように映ってるんかも。
絶望や、諦めなどを経験して、「そこから世界が色を失った」って表現あるやん?
シンドラーにとってもそうで、彼がナチスもユダヤ人も平等に接するのは、色が付いてない…個々を認識出来ていないからなんちゃうかな?
いわば、彼自身が破綻していてそれに気付いていない。
だから、シンドラーは肩書きで人を判断する。工場に雇い入れる人選を会計士のイザックに任せる。女性に対しても…もしかしたら奥さんも愛人も違いが分からず同じように見えてるんかも。
そんな色のないシンドラーの世界に唐突に現れる赤い服の少女。
シンドラーは気付く。
自分の見ている世界の違和感に。
シンドラーが何故ユダヤ人を救ったのかわからんって?
違うよ。
人を救うのに理由なんかいらん。
そもそも、この物語で重要なんはそこじゃないんちゃう?
世界が色を失ったのは何故?
シンドラーだけじゃなく、ナチスもユダヤ人も誰もが色を失ってる。破綻してる。
原因は「戦争」よな。
赤い服の少女は、シンドラーにそれを気付かせた。
そして、彼は、最も人間らしい行いを自分に出来る方法で実行する。
俺らはそれを追体験する。
シンドラーは、収容所の所長アーモン・ゲートでさえ悪だと否定しなかった。
それは、戦争が人を色のない世界に迷い込ませ、その中にいると自分ではなかなか気付けないとわかっているから。戦争が…というより戦争によって疲弊したり、偏見、誹謗、嘲笑などを助長して日常化させた結果…かな?
そして今、世界は再び色を失いつつあると思う。
ハラスメント、イジメ、無関心、戦争…
今、俺は赤い服の少女に気付けてるやろうか?
最も人間らしい行いが俺には出来てるやろうか?
後悔はしたくないけど…
今の時代こそ、『シンドラーのリスト』は観ておいたほうが良い。
隣の人も同じ気持ちなら心強いし。
ただ、疲れている時の視聴は控えて、用法と用量には十分注意してご鑑賞下さいますよう…笑
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