オーウェン

暁の7人のオーウェンのレビュー・感想・評価

暁の7人(1975年製作の映画)
4.0
「暁の7人」の主演俳優ティモシー・ボトムズは、「ジョニーは戦場へ行った」「ラスト・ショー」「ペーパー・チェイス」等での印象的な演技で、私のお気に入りの俳優のひとりになりました。

「暁の7人」の彼は、きりっと引き締まった表情で、緊張でピリピリするような心が張り詰めた荒武者といった風情があります。
そして、ある種の悲しみを湛えた優しく暗い眼が、とても印象的です。

第二次世界大戦において、チェコスロヴァキアは、ドイツ軍の怒濤の進撃で占領されてしまいます。
ティモシー・ボトムズ扮するヤンは、ロンドンで機会を待つチェコ解放軍の兵士。
その彼らに、祖国チェコで占領・支配しているナチス・ドイツの総司令官ハイドリッヒ暗殺の指令が下される。

この指令は、大胆不敵な極秘作戦で、戦局を連合国軍側に有利に展開させるための、非情極まる作戦計画だった。
そして、今回選ばれたヤンを含む解放軍の3人は、明らかに"捨て駒"だったのだ。

私は、この映画を観ながら、イギリス、ドイツ、ロシア等の強国に挟まれて、悲劇的な歴史を歩んできた東欧諸国の運命を垣間見る思いがしました。
そのように感じた時、どこか悲劇的で悲しい表情を張り詰めさせたティモシー・ボトムズの個性が、ひと際、ものをいっていると思います。

このティモシー・ボトムズという俳優は、本質的に"青春の悲しさ"を体現できる稀有な存在だと思います。
眉をきりりと上げて、しっかりと未来を見据えている時でも、その高い鼻梁のかげに、若く純粋な悲しみと愁いの影が漂うのです。

「暁の7人」は、ティモシー・ボトムズを主演俳優として起用したことで、この悲劇的な戦争秘話に、悲しみの感動を盛り込むことができたと言ってもいいと思います。
ただ、その後の彼は、良い作品にも恵まれず、役者として失速していったのが残念でなりません。
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