半兵衛

キングコングの逆襲の半兵衛のレビュー・感想・評価

キングコングの逆襲(1967年製作の映画)
3.5
『キングコング対ゴジラ』のときよりも精悍になった(でもやや間抜けフェイス)なコングが今度は謎の組織に捕まって北極へ行ってエレメントXという謎の物質を掘らされる羽目になるという奴隷のごとき待遇がひたすら不憫な一作、そして惚れたヒロインに何かとこき使われているのに恋人がいるので同情はされるけど愛されないという状況も不憫さをさらに増幅させる。

でももっと哀愁が漂ってくるのがライバルポジションであるはずのメカニコング、全体的に丸めなタッチでメカらしさを抑えて猿形ロボットらしい雰囲気に仕上がってはいるが目が電球っぽいせいか今一つ弱そうだしすぐ壊れるし悪党ドクター・フーにこき使われっぱしと全然良いところがないのが見ていて可哀想になってくる。序盤に出てきたゴロザウルスが恐竜の格好良さをよりスタイリッシュに膨らませた名怪獣なだけに尚更そう感じてしまう、ちなみにゴロザウルスが『怪獣総進撃』でゴジラの相棒役を演じたり『怪獣黙示録』でスーバーXを飛び蹴りで破壊したりとその後も活躍しているのにメカニコングはそういう機会に恵まれていないのもその原因の一つかも。

『フラバラ』以降盛んに東宝で製作された20メートルサイズ怪獣映画でのノウハウが生かされた特撮も見所で、地を走ったり海を泳いだりする様子がダイナミックに演出されて『ゴジラ』とは違う面白さが堪能できる。終盤の東京タワーを破壊するのではなく対決の場所にするというアイデアも見事(ちょっと長いけど)。

ただお話が主人公の一人と悪党のボスが顔見知りだったり、悪党のバックボーンが大雑把だったりとプログラムピクチャー以上の規模になっておらずそのためやや古色蒼然としたお話になっているのが残念。それでも主人公たちがキングコングを巡って世界を冒険するという物語や、悪人や謎の美女といった登場人物など今や絶滅危惧種となった少年向けの冒険小説(ちょっと年齢高めの)みたいでこれはこれで味わい深い。

キングコングが愛する女性への愛を断ち切って何処かへ去っていく「男はつらいよ」のようなラストも◎。
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