アベラヒデノブ0阿部羅秀伸

ある子供のアベラヒデノブ0阿部羅秀伸のレビュー・感想・評価

ある子供(2005年製作の映画)
4.1
日本国内で賛否が別れるのは当然。
当時、ベルギーの若者の失業率20%だそうだ。主人公ブリュノのような生活を送る若者は決して特別ではない。
日本の観客からすれば、非常識で幼稚な主人公の行動には不快感を覚えて当然だ。
『THE CHILD』
このタイトルは、赤ん坊や共犯者の少年だけでなく、主人公ブリュノ自身にも注がれている。
彼は仕事も痛みも責任も知らず、親になる気などさらさらない、自分のことだけで精一杯。大人になれない子供なのだ。
初めて失い初めて後悔し元には戻せない壊れた未来に彼は打ちのめされる。
だがそれでも彼の愚行は止まらない。いや止められない。止まり方を知らないのだから。そうやって育ってきたのだ。回想など無くても彼の貧しい家庭環境が透けて見えるようだ。
悪いヤツではない、その日暮らしが染み付いているせいで、計画的な生活がイメージできない。
恐らくそのネジは外されたのだ、子供時代に。
全てが絶望に浸され終わりのゴングが鳴り響き、彼は自ら少年から大人になる選択をした。
ラストシーンには思わず涙が溢れた。
惜しみなく降り注ぐ希望。
胸が熱くなった。
大人になるために彼は自分を犠牲にできるか?