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クリスチーネ・Fのsickboyaのレビュー・感想・評価

クリスチーネ・F(1981年製作の映画)
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東と西にドイツが分断されていた時代の映画。西ドイツという響きからは、冷戦を感じますね。

舞台は、70年代中盤の西ベルリン。
あの「トレインスポッティング」よりも先に、あの「トレインスポッティング」よりも生々しくドラッグを描いています。
実在するクリスチーネさんの実録手記に基づいた映画です。

この映画を知ったのは、Thieves Like Usというバンドの''Drugs in My Body''というPVでした。曲名と映画は、まさにぴったりですね。

70年代の西ドイツでは中学生くらいから麻薬に溺れて命を落とす子供が後を絶たなかったようです。そのような状況を示唆する新聞記事が、劇中に幾度となく出てきます。しかも、そのほとんどが10代の中高生。勤勉な国、ドイツ。そして、戦後のヨーロッパ経済を立て直したドイツ。
その事実とは程遠いドイツがこの映画の中にありました。多少、ドイツというとヘビメタ文化やクラブ文化のイメージがありましたが、これは「トレインスポッティング」に出てくるようなチンピラがドラッグをやるのと訳が違いました。
そして、劇中では嘔吐をしながら麻薬を抜くシーンなど、観る人を選ぶ過激なシーンが多々あります。
また、この映画は「トレインスポッティング」のように麻薬の快楽を洒落た感じではなく、とっても暗く描いているシーンによって見ている側も辛くなるのが印象的でした。

スクリーン越しに観た、西ベルリン市内はゴミだらけで落書きだらけ。すごく退廃した世界。そして、夜の西ベルリン市内は街灯が少なくて真っ暗。
そこから、ヨーロッパの空気の冷たさ、冷戦を感じました。

この映画は、ファッションの面から観ても面白いです。Gジャンにデニムのスキニーパンツに白のアディダス。ジャーマンストリートって感じがプンプンします。そして、登場するキッズ達の髪型が面白いですね。くせっ毛をナチュラルに伸ばしてるのもいれば、ジャパニーズヤンキーみたいな髪型の奴も登場します。

そして、この映画の醍醐味は、デヴィッド・ボウイが出演協力をしている点です。当時のボウイのベルリン講演が少しだけ見れちゃいます。''Station To Station''を歌うボウイは、とっても美しいです。クリスチーネを含め、当時の西ドイツのキッズ達はボウイのファンだったみたいですね。そんなクリスチーネは、ヘロインのためにボウイのLPコレクションを泣く泣く売るという悲しいシーンがありました。そして、映画のサントラはボウイのアルバム''Station To Station''からほとんどが選曲されています。ドイツ語版の''Heroes''も劇中で流れます。釣り銭泥棒をして警察から逃げるシーンでこの曲が流れるのですが、とても無邪気で青春を感じる気持ちの良いシーンです。

余談ですが、登場するボウイ(1975年くらいの)は麻薬中毒で荒れていた時期のボウイがモデルなんです(映画は1981年)。そのため、ベルリンに麻薬治療で滞在していたんですね。
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