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学生ロマンス 若き日のALABAMAのネタバレレビュー・内容・結末

学生ロマンス 若き日(1929年製作の映画)
2.9

このレビューはネタバレを含みます

1929年の松竹蒲田作品。現存する中では小津安二郎の最も古い作品。当時の大学生の友情、恋愛事情を学生生活と絡めて非常に緻密に描いている。冒頭に「都の西北」という字幕が出るため、おそらく早稲田大学生をモデルにしていると思われる。
学生である渡辺はひょんなことから見ず知らずの若い女性、千恵子に下宿を明け渡し、友人の山本の下宿を間借りすることになる。渡辺は美人の千恵子を狙うが実は山本と千恵子は友人で、山本もまた彼女のことが好きだった。千恵子が新潟の赤倉へスキーに行くと知った2人は大学の試験を終え、列車に乗り、大学のスキー部について赤倉を目指す。そこで2人は啀み合いながら千恵子を奪い合うが、千恵子はスキー部員の一人とお見合いをするために赤倉に来たということを知ってがっかりする。2人は仲直りし、仲良く東京の下宿に帰るという話。
渡辺は非常に軟派で、女に対し欲深く、ガサツで勉強嫌いだが、変な所でずる賢いというダメ学生。教科書を投げたり、二ノ宮金次郎の像の顔に食べ物をくっつけたり、机について居眠りしたりと随所にそのキャラクターが分かる描写が観られる。一方の山本は勤勉で、硬派で、丸めがね。勉強は大好きだが、ちょっと間の抜けた所があり、運動は苦手というガリ勉学生。物語中2人は対照的な存在として描かれ、片一方が彼女に近づいて機嫌が良ければ、もう片方は嫉妬でぶすっとしている。常に対照的な2人は、ラスト、お見合いが分かった場面で初めて心が通う。若い男は単純でみっともない愛すべきバカであるとよく分かる楽しい作品。
この頃の小津作品はカメラがアクロバティックであったり、話もコメディ調で晩年の落ち着いた作風とは一味違っている。
スキー部員役で若き日のワイルドな笠智衆も観ることができる。
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